右も左もアメリカ・ファースト
最後に、三つ目の理由はアメリカ国内で根強い国内回帰の声である。別の言い方をすれば、孤立主義とも表現できるが、それはアメリカが世界の警察として国際秩序を維持する役目があるという視点を有している同盟国側からでてくる言葉である。一方、一般的なアメリカ人からすれば、世界の警察であるアメリカというのは異常な存在であり、国民のために尽くしてくれる政府が理想である。
また、実際アメリカの国内状況を鑑みれば、そのようなアメリカ人の気持ちが分からくもない。現在、コロナやウクライナ危機などといった複合的な要因が重なって歴史的な推移でインフレが進行しており、ガソリンの高騰が止まらない。そのせいで日々の生活が苦しくなれば、海外で何が起こっているかは気にせずに、自国民のために政府に働いてもらいたいはずである。そして、それは保守であっても、リベラルであっても同じである。
また、その国民の内向きな傾向を象徴的に表したのが、先日のバイデン大統領の一般教書演説である。演説の冒頭の大部分を使い、バイデン大統領はウクライナとの連帯、ロシアへの非難を強調したが、全体の大部分をしめたのは国内政策についての言及である。また、演説で最も歓声が上がった箇所の一つが、民主党版のアメリカファーストであるバイ・アメリカン(アメリカ製品を買え)への言及だったことを考えるとアメリカの内向き化が同盟国にとって深刻であるか読み取れる。