発売時から「大人」に向けて訴求した

「最近のパルムはマルチパック(6本入り)よりもノベルティ(1本入り)が好調です。コロナ禍で在宅勤務が進んだ2021年度から、お店の手作りジェラートを意識した『パルムジェラート』を展開するなど、新たな訴求もお客さまにご支持いただいています」

森永乳業・マーケティング統括部 冷菓事業マーケティング部の平安杏(ひらやす・あんず)さんは、こう話す。以前は一口アイスの「ピノ」(1976年発売)も担当した。

ピノから30年近く後に生まれた「パルム」だが、その特徴は何か。

「一貫して『大人』をターゲットにしてきました。発売2年前の2003年から開発に着手しましたが、当時のアイス市場は子ども向けが主流だったことから、その差別化を図ったのです。“大人が満足できるシンプルでちょっと贅沢なチョコバーアイス”というコンセプトは発売時から変わりません。乳業メーカーとして質の高い乳原料にこだわり、口の中でチョコとアイスが同時に溶けるのも意識しています」(同)

そうした上質感も消費者に受け入れられた。以前の取材では「日本人の舌は繊細なので、年々それをご評価いただいています」という話も聞いた。

急成長したアイス「パルム」の差別化戦略…安納芋やモンブランが売り切れ続出
(画像=パルムブランドを担当する平安杏さん、『Business Journal』より引用)

「春夏」と「秋冬」で訴求するフレーバーの違い

ところで、最近のアイスは期間限定品を頻繁に投入して消費者の購買意欲を促す。パルムも「赤パルム」と呼ばれる定番品(通年販売)以外に、さまざまな限定品を発売してきた。

「春夏秋冬の四季ではなく、大きなくくりでは春夏と秋冬に分けて期間限定品を発売します。パルムの特徴である食感、“なめらか”で“やわらか”を意識して濃厚だけど食べ飽きない味、素材とチョコとの一体感をどう感じていただくか、をめざしています」(同)

今年発売された期間限定品は、下記のとおりとなっている。春夏向けにはショコラミントとジェラート。秋冬向けには安納芋、モンブラン、ピスタチオ&ラズベリーで訴求した。競合ブランドでも発売される夏のチョコミント(パルムではショコラミント)や秋の安納芋は人気味となっている。総じて夏はさっぱり系、冬は濃厚系が支持される。

【2023年に発売したパルムの期間限定品(発売日 商品名 特徴 種類)】

・4月3日 パルム・ショコラミント ミントアイスに生チョコソースをマーブル状に充てん、セミスイートチョコで包み込んだ 1本入り(ノベルティ)

・6月12日 パルム・ジェラート白桃 なめらかな白桃ジェラートと果汁コーティングを組み合わせた 1本入り(ノベルティ)

・8月21日 パルム・安納芋 なめらかな安納芋アイスをホワイトチョコでコーティングした 6本入り(マルチパック)

・9月4日 パルム・モンブラン なめらかなモンブランアイスにマロンソースを充てん、ホワイトチョコでコーティングした 1本入り(ノベルティ)

・10月9日 パルム・ダブルチョコ ピスタチオ&ラズベリーショコラ ピスタチオペーストを使用したアイスをラズベリーチョコ&ピスタチオ入りのセミスイートチョコでコーティングした 1本入り(ノベルティ)

ところで、SNSでは「パルムの安納芋はあっという間に消えた」「いろんな店を見たけど買えなかった」という声もあった。メーカーとして、どんな販売施策を打ち出したのだろうか。

「ご購入いただけなかった方には申し訳なく思っています。昨年より多く数量を準備しておりましたが、需要が想定をはるかに上回る状況となり、なかなかご購入いただけないお客さまも多くいらしたものと思います」 (広報担当)

安納芋は昨年も限定フレーバーで発売して人気を呼んだ。具体的な数量は非公表だが、前年よりもハイペースでの売れゆきだったという。