NANDの企業別売上高シェア

図1に、NANDの四半期ごとの企業別売上高シェアを示す。2010~2011年頃は、サムスンとキオクシアがトップシェアを争っていた。しかし、2012年以降は両者のシェアの差が拡大していった。

キオクシアとウエスタンデジタルの経営統合は実現できないと予想される根拠
(画像=『Business Journal』より引用)

また、最近の動きとしては、2021年12月30日に、SKハイニックスが米インテルのNAND事業(中国の大連工場)を買収した。加えてSKハイニックスは、インテルのSSD事業も買収する計画で、その事業会社として米カリフォルニア州サンノゼにSolidigmを設立した。以上の結果、2023年第2四半期(Q2)のNANDの企業別シェアは、1位サムスン(31.1%)、2位キオクシア(19.6%)、3位(インテルを買収した)SKハイニックス(17.8%)、4位WD(14.7%)、5位米マイクロン(13.0%)となっている。また、Others(3.8%)のほとんどが中国のYMTCと推測される。

このようなNANDメーカー勢力図のなかで、キオクシアとWDが経営統合したら企業別シェアはどうなるだろうか(図2)。このグラフでは、2010年以降について、キオクシアとWDの合計、SKハイニックスとインテルの合計のシェアを示している。

キオクシアとウエスタンデジタルの経営統合は実現できないと予想される根拠
(画像=『Business Journal』より引用)

改めて図2を見ると、2014年頃にキオクシア+WDがサムスンに10%程度リードした時期があることがわかる。しかし、2015年以降は、キオクシア+WDとサムスンは一進一退の攻防を繰り広げている。そしてもし、キオクシアとWDの経営統合が実現すると、NANDメーカーは次の5陣営に絞られることになる。2023年Q2のシェアの高い順に、1位がキオクシア+WD(34.3%)、2位サムスン(31.1%)、3位がインテルを買収したSKグループ(17.8%)、4位マイクロン(13.0%)、5位YMTC(3.8%以下)である。この結果から、キオクシア+WDの統合会社が、わずか3ポイントではあるがサムスンをシェアでリードする。つまり、世界最大のNANDメーカーが誕生することになる。

しかし、半導体メモリには、NAND以外にDRAMがある。そして残念ながら、キオクシアとWDはDRAMを生産していない。これが、キオクシアとWDの弱点でもある。以下では、DRAMの企業別シェアを見てみよう。

DRAMの企業別売上高シェア

図3に、DRAMメーカーの四半期ごとの売上高シェアを示す。2012年2月にエルピーダメモリが経営破綻し、2013年7月にマイクロンが買収した。そのため、2012年Q1に11.6%だったマイクロンのDRAMシェアは、2013年Q3に26.2%に跳ね上がる。そして、同年Q4には28.7%となり、SKハイニックス(23.8%)を追い抜いて、サムスン(39.1%)に次ぐ2位となる。しかし、マイクロンが2位になったのはこの一瞬だけで、すぐにSKハイニックスに抜き返されるとともに、マイクロンのシェアは次第に低下して、2015年Q3には20%を下回ってしまう。この原因は、今のところよくわからない。

キオクシアとウエスタンデジタルの経営統合は実現できないと予想される根拠
(画像=『Business Journal』より引用)

その後、2015年から2021年頃までは、1位サムスン、2位SKハイニックス、3位マイクロンが定位置となる状態が続いた。この頃は、DRAMメーカーが実質3社に集約されたために、「暗黙の談合をしているのではないか」という疑いを持っていた。そして、2022年Q4~2023年Q1に、マイクロンがSKハイニックスを抜いて再び2位になった。ところが、2023年Q2に、SKハイニックスがすぐにマイクロンを抜いて2位を奪還した。このときのSKハイニックスのシェアは30.1%で、1位のサムスン(39.6%)に9.5ポイント差まで接近している。

過去を振り返ってみても、SKハイニックスのDRAMシェアが30%を超えたのは、2013年Q2(30.0%)、2018年Q4(31.2%)、そして今回の2023年Q2(30.1%)の3回しかない。そして、2023年Q2のSKハイニックスのシェア増大には明確な根拠がある。それは、ChatGPTなどの生成AIが世界的に普及し、それに使われるAI半導体としてNVIDIAの画像処理プロセッサGPUが引っ張りだこになったことに起因する。

NVIDIAのGPUには、台湾積体電路製造(TSMC)が2012年に開発したCoWoS(Chip-On-Wafer-On-Substrate)と呼ばれるパッケージが使われている。そのCoWoSには、DRAMを縦に積層したHBM(High Bandwidth Memory)が搭載される。そして、SKハイニックスは、HBMのトップシェアを有している。その効果で、2023年Q2にSKハイニックスのシェアが急増したのだろう。

ここまで、NANDとDRAMについて、それぞれ企業別シェアを見てきた。それでは、キオクシアとWDの経営統合が実現した場合、DRAMとNANDを合計した半導体メモリは、どのような勢力図になるだろうか。