広告費で実質手数料は増大する
そして今回、問題となっているマーケットプレイスでの販売に関しては、出品者に課せられる手数料に次のようなものがある。主に販売手数料、出品プランの手数料、在庫保管料(FBAの場合)の3つだ。前者2つは(2-1)(2-2)いずれの配送方法でも同じ手数料であり、(2-2)の場合に在庫保管料が別途加えられる。このほか配送料がかかるが、これはアマゾンへの支払いではなく配送業者の取り分だ。
・販売手数料…売上高の8~15%くらい。本、パソコンなどカテゴリーごとに設定される。
・出品プランの手数料…小口出品:100円/商品、大口出品:4,900円/月
・在庫保管料(FBAを利用する場合)…月4,000円~
海外の記事では手数料が50%にもなると報じられているが、実際にそのようなことはあるのだろうか。そして日本でも起こりうるのだろうか。
「報じられている手数料50%というのは、厳密には手数料ではなく広告費を加えた数字です。ワンクリック広告で考えた場合、販売価格に対して10%程度が広告料の相場になります。弊社が日本のアマゾンで売っている醤油の価格相場は1,700円ですが、ワンクリックの広告費は100円位です。アメリカでも“syoyu”のワンクリック広告を打っていて、現地では販売価格30ドルに対し広告費は2ドルほどになります。日米どちらも広告費は10%程度であり、販売手数料の相場も日米で変わりません。制度上、販売価格が低い場合は日米問わず実質的なトータルの手数料が50%になる可能性もあります」(幅氏)
販売手数料15%、広告費10%で計25%だが、これに出品プランの手数料やFBAの手数料などを加えると、販売価格が低すぎる場合は50%を超える可能性があるようだ。小規模かつ安価な物を扱う出品業者は販売価格を引き上げざるを得ないだろう。弱者にとって厳しい制度といえる。
「カテゴリーごとの販売手数料などは昔からあまり変わっておらず、アマゾンの手数料を他モールの相場と比較しても実はそんなに高くありません。FBAの手数料も引き上げられましたが、配送料の引き上げに伴う仕方ない対応です。ちなみに販売手数料などは楽天市場のほうがトータルで見ると高いです。また、Yahoo!ショッピングなどのモールは、大手ショップ以外にとっては出品する価値がないくらい売れません。近年厳しくなっているのは広告費です。ECでの販売に広告は必須ですが、小売全体におけるEC化率の上昇や出品者によるアマゾンへの参入が増えたことにより、クリック単価は引き上げられてきました。アマゾン独自の広告である動画広告は実装された当初、ROAS(広告費用対効果)が高い宣伝手法だったのですが、今では動画広告利用者が増えてクリック単価も倍以上に高騰しています」(同)
幅氏の言う通りECでは良い場所に表示されなければ、そもそも買われることはない。そのため出品者は広告を打つのが必須となる。しかし広告費は以前より引き上げられており、出品者が利益をあげるのは以前よりハードルが高くなっているようだ。