反対理由は利益だけではない

 労組結成にアマゾンが反対する理由として第1にあげられるのは利益の減少だろう。ニューヨークで結成された労働組合は最低賃金を18ドルから30ドルへと引き上げるよう要求しているが、同物流施設では8000人以上の従業員が働いている。仮に要求が通った場合、2億300万ドル(約300億円)も営業費用が増えることになると小久保氏はいう。全社の営業利益に対する割合は小さなものだが、同施設以外でも労組結成の動きが波及した場合、会社にとってその影響は大きなものとなるだろう。だが、利益そのものだけが反対理由ではないと小久保氏はいう。

「アマゾンは主要事業であるECのほか、サブスクリプションやクラウド(AWS:Amazon Web Services)などさまざまな事業を展開しています。これら3事業で売上の9割以上を占めますが、各事業にライバルがいる状態でありアマゾンは危機感を持っています。そのためアマゾンは『第4の柱』を確立すべく17年にホールフーズを買収して実店舗事業を開拓したほか、医療サービス企業の買収などを行ってきました。しかし、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたように新事業はどれも成功していないようです。こうした状況で利益の減少は投資の原資が減ってしまうことを意味します。アマゾンは経営の自由度を下げないよう労組結成に反対していると考えられます」(小久保氏)

 アマゾンは利益を積極的に新事業などへ再投資し続ける企業として知られる。アメリカで確たるシェアを握るEC事業も、それによって拡大してきた。利益を少しでも多く新規事業の開拓に使いたいアマゾンにとって、労組結成は足かせになると考えられる。