短期間で売却できる適切な価格設定が大切

なぜ、3カ月以内に買い手がつくような値付けが大切なのかは図表2をご覧ください。これは、売出から成約までかかった期間別の価格乖離率の変化を表しています。一見して分かるように、成約までの期間が短いほど乖離率が低く、長くなるほど乖離率が大きくなります。つまり、短期間で成約できる物件は乖離率が小さく、売出価格に近い価格で成約し、売却までの期間が長い物件は、値引き幅を大きくしないと契約が成立しにくいということになります。

2022年の場合、1カ月以内に売却できた物件の価格乖離率は-2.62%でした。たとえば、5000万円で売りに出した物件であれば、100%-2.62%で、5000万円の97.38%、4869万円で売却できたことになります。それが、売却までの期間が3カ月の物件の価格乖離率は-5.70%ですから、100%-5.70%の売出価格の94.30%で契約が成立していることになります。売出価格が5000万円であれば4715万円ということです。1カ月以内なら4869万円で売れたのが154万円も安くなってしまったわけです。

「今、中古マンション高く売れる」の罠…売出価格・時期を誤ると100万円単位で損
(画像=『Business Journal』より引用)

首都圏 2022年下期の価格乖離率は-5.58%、4期ぶりに5%台へ (kantei.ne.jp)

8カ月かかると売出価格から1割以上安くなる

さらに、売却まで4カ月かかった物件の価格乖離率は-6.95%で、5カ月かかると-7.95%に拡大します。8カ月かかると-10.48%と売出価格より実際の取引価格は1割以上低くなってしまいます。その後、多少の上下はありますが、11カ月かかると-11.12%まで価格乖離率が拡大してしまいます。いかに適切な価格設定が重要であるかがわかります。

最初から、市場で受け入れられる価格で売りに出して、短期間で決着を付けることが大切。価格が上がっているからと欲をかいて、市場にそぐわない値付けをしてしまうと、短期間では客がつかず、図表2にあるように売却まで8カ月以上かかり、売出価格から1割以上安い価格でしか成約できないような事態になりかねないのです。その意味では、売りに出すときには、周辺の相場をシッカリと調べて、実際にいくらで契約が成立しているかを確認して、それにふさわしい値付けを行う必要があります。