リバプールが必要としていたもの

この夏にMFファビーニョ(アル・イテハド)、元主将MFジョーダン・ヘンダーソン(アル・イテファク)、元副主将MFジェームズ・ミルナー(ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン)を失ったリバプールは、守備的MF(DMF)が適正の選手が必要だった。

直近には、前述の通り元ブライトンのカイセドを英国記録となる9500万ポンドで、元サウサンプトンのラビアを6000万ポンドで、それぞれ獲得を試みるも、個人間合意も報じられていたにも関わらず2選手ともにチェルシーに加入した。

他にも今夏に獲得すると噂されている若手選手(バイエルン・ミュンヘンMFライアン・フラーフェンベルフ、ニースMFケフレン・テュラム、ボルシア・メンヒェングラートバッハMFクアディオ・コネ)がいるが、いまだに1つも公式発表はない。

特に元主将と元副主将の退団はサポーターを不安にさせたことだろう。在籍するMFの平均年齢は低く、24歳を超えるのはチアゴ(32歳)のみ。年齢はただの数字だと捉える意見はあるが、経験豊かな選手がチームに必要なこともあるというのは、歴史が物語っている。

将来有望な選手よりもリバプールがこの状況で必要と判断したのは、確立された経験豊かな選手だった。そんな選手として、遠藤を選んだのだ。遠藤の獲得についてリバプール専門サイト『This Is Anfield』は「失われたリーダーシップと経験を補うということを考えれば理に適っている」と報じた。


リバプール MF遠藤航 写真:Getty Images

遠藤に対する欧州の評価

では、遠藤がリバプールが失った「リーダーシップと経験」をは補えるのだろうか。この2つに関連した遠藤の評価は以下の通りだ。

2021年、当時シュツットガルトのスポーツディレクター(SD)を務めていたスヴェン・ミスリンタット氏は「サッカーの資質、メンタリティ、そしてプロフェッショナリズム。ワタル(遠藤)は最も文字通りのリーダーだ」「選手として、そして人間として、非常に貴重です」と遠藤について言及した。

また、クロップ監督は遠藤加入時の会見で「(遠藤は)本当に良い選手だ。経験豊富、シュツットガルトのキャプテン、日本代表のキャプテン、上手に英語を話す、優しい仲間、家族思い、ピッチ上のマシン、優れたサッカー選手、素晴らしい人間性」と評価した。

現時点のリバプールに必要な「適正ポジションがDMFの選手」「リーダーシップ」「経験」の3つを兼ね備えている遠藤は、それらを補うことができると期待されていることがわかる。

なお、SDのミスリンタット氏は、クロップ監督がボルシア・ドルトムントを指揮していた際(2008-2015)に、プロサッカー部門のチーフ・スカウトとして一緒に働いていた過去がある。2人は今でも定期的にコミュニケーションを取っており、強い関係性を築き上げ信頼し合っていることから、遠藤の情報を共有していた可能性は高いだろう。

さらに、リバプールのSDヨルグ・シュマートケ氏は、これまでハノーファーやケルン、ヴォルフスブルクで補強責任者を務めてきたため、ブンデスリーガの知識が豊富だ。そして、シュマートケ氏とミスリンタット氏の2人にも強い繋がりがある。遠藤のリバプール加入は、この3人の関係性があったからこそ起こったことかもしれない。

では、もっと細かく遠藤の選手としての特徴を確認していこう。

MF遠藤航(シュツットガルト所属時)写真:Getty Images