プーチン大統領は9月30日、ウクライナ南東4地域の住民投票結果が何れも「約90%が併合に賛成」だったことを受け「真実は我々の背後にある!ロシアは我々の背後にある!」と演説した。だが国際社会は、彼がウクライナに侵攻する直前の2月21日に次のように述べたことを鮮明に覚えている。
私は、長年の懸案であった決定を下し、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立と主権を直ちに承認することが必要であると考える。私は、ロシア連邦の連邦議会がこの決定を支持し、そして両共和国との友好・相互援助条約を批准するようお願いしたい。この2つの文書は間もなく作成され、署名される予定だ。
それが9月30日の演説では、2地域だったはずのウクライナから奪う領土が、いつの間にか以下の様に4地域になっているのを世界は知る。そも軍事侵攻を開始した2月24日のプーチン演説は「私たちの計画にウクライナ領土の占領は入っていない」としていた。「さすがロシア」、彼らに「武士に二言はない」と言う語は存在しない。
今日、我々はドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、ザポリージャ地方、ケルソン(ヘルソン:筆者注)地方のロシアへの加盟に関する条約に署名する。私は、連邦議会が、4つの新しい地域、すなわちロシア連邦の4つの新しい構成体の承認と設立に関する憲法を支持すると確信している。そして、これはもちろん彼らの権利であり、国連憲章の第1条に謳われている、民族の平等な権利と自決の原則を直接語る、彼らの譲れない権利なのだ。
この状況についてロシアのガルージン駐日大使は、5日に都内で行った講演でプーチン演説に呼応するかのように、「国際司法裁判所(ICJ)は(一部地域が)独立を宣言する際、その(所属する)国の中央政府の許可は必要ないとコメントしている」と主張し、正当化した(5日『時事通信』)。

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このICJ判決に関連してプーチンは、さる4月26日にモスクワで行ったグレテス国連事務総長との会談で、「自決権を行使する際、国家の領土は国の中央当局に主権を宣言する許可を申請する義務はない」と言及した。ガルージン駐日大使の発言はこのプーチンの主張に沿ったものだ。