ダイバーシティの歴史

ダイバーシティはアメリカを発端とする考え方です。属性による差別を解消する運動と共にその歴史が刻まれてきました。現在の「ダイバーシティ2.0」に至るまでのダイバーシティに関係する出来事と時代の変遷について簡単に説明します。

STEP1.リスクマネジメント

現在における企業のリスクマネジメントの形は、1960年代・1970年代のアメリカの危機管理型が採用されています。

南部のアフリカ系アメリカ人学生を中心に公民権運動が起こり、1964年には公民権法が成立。これはアメリカの黒人の基本的人権を要求する運動で、この運動と公民権法の成立を機にダイバーシティの考え方が誕生したと言われています。

参考:アメリカンセンターJAPAN「米国の公民権運動」

STEP2.雇用機会均等法

公民権法の成立後、日本では西暦1985年5月に「男女雇用機会均等法」が成立しました。それまでは、男性は仕事をし女性は家庭を守るものという考えが一般的でした。それが「男女雇用機会均等法」により、女性と男性を均等に扱う「努力義務」や女性に対する差別的な扱いの禁止が施行され、現在に至るまで改正が行われ続けています。

参考:厚生労働省「男女雇用機会均等法の変遷」

STEP3.戦略的ダイバーシティ

人種による差別を廃止したり、男女による扱いの差を少なくしたりと、ダイバーシティの歴史は各属性が受けていた不当な扱いを解消するための歴史と言っても過言ではありません。

その後は「戦略的ダイバーシティ」が展開されていきます。1990年代後半にかけて行われ、競争優位性を確保するための手段としてダイバーシティが用いられていたと言われています。

STEP4.ダイバーシティ2.0

そして今後は、政府も提唱する「ダイバーシティ2.0」の時代です。政府から要望され形式的にダイバーシティを導入していた「ダイバーシティ1.0」の時代とは違い、企業がダイバーシティにコミットし、多様な属性の人材を活かし企業の付加価値を高めていく姿勢がみられます。

表層的な取り組みではなく深層的な取り組みにシフトしており、中長期的・継続的に実施されているのも特徴です。

参考:経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」

ダイバーシティの2つの種類

ダイバーシティには、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの2種類があります。自社のダイバーシティ化を進めるにあたって、どちらも取り組むことが考えられます。2つの違いと期待できる影響を理解して、効果的に取り入れましょう。

表層的ダイバーシティ

「表層的ダイバーシティ」とは、性別・国籍・年齢・言語などの属性のことです。表層的と聞くとあまり良い印象を受けないかもしれませんが、ダイバーシティはまず表層的な部分から注力するのが一般的です。

表層的ダイバーシティでは、例えば女性管理職の数を増やす、外国籍の人材も採用するなど人材の多様化が行われます。障害者雇用やシニア雇用の表層的ダイバーシティのひとつです。

深層的ダイバーシティ

「深層的ダイバーシティ」とは、職歴やスキル、パーソナリティ、価値観、文化的背景など内面からは判断するのが難しい内面的特性のことです。個性やアイデンティティの多様化とも言い換えられます。本来、企業が目指すダイバーシティは深層的ダイバーシティのことを指します。

表層的ダイバーシティによる人材の多様化では、業績に大きな影響を与えられないと言われています。一方、深層的ダイバーシティでは、知識・経験・思想が異なる多様な人々がお互いに協力することができれば、業務の効率化やイノベーションが起こり、ビジネスの成果に結びつきます。