TSMCの業績の総括と今後の展望
TSMCの2023年Q2までの業績を分析した。その結果、四半期のウエハ出荷枚数が、2022年Q3から2023年Q2にかけて約100万枚も減少していることがわかった。これにより、TSMCのウエハ出荷枚数は4分の3に激減した。次に売上高を見てみると、米国向けが大きく減少しており、その中身はスマホ用と高性能コンピュータ用で、特に7nmと5nmの最先端半導体の落ち込みが大きかった。
では、TSMCの業績は、いつ回復するのだろうか。四半期のウエハ出荷枚数も、売上高も、まだ底を打っていない。そして、決算発表では、C.C.Wei CEOが、「2023年通期では10%の減益になる」と述べたという。ということは、2023年Q3とQ4も回復に期待が持てない。本格的な回復は、来年2024年に入ってからになるだろう。では、TSMCの業績を向上させるためのテクノロジードライバーは何になるのか。
ChatGPTなどの生成AIが爆発的に普及
昨年2022年11月、オープンAIがChatGPTを公開し、対話型の生成AIが爆発的に普及し始めた。これら生成AIはクラウドのAIサーバー上で動作する。そのサーバーには、米エヌビディアのGPUや米AMDのCPUなどが多数必要になる。そのエヌビディアが2023年5月末に、GPUをTSMCに大量発注したと台湾メディアが報じた。しかし、これはすぐにはTSMCの業績向上にはつながらない。というのは、エヌビディアの発注を受けて、ウエハを工場に投入してから、前工程と後工程を経てGPUがつくられるには4~5カ月程度かかる。加えて、エヌビディアのGPUには、CoWoS(Chip-On-Wafer-On-Substrate)という3次元パッケージが使われるが、その生産能力がボトルネックになっているからだ。
そのため、TSMCは慌てて2023年6月8日に、後工程の新工場「Advanced Backend Fab 6」を開設した(EE Times Japan、『TSMC、3D実装対応の先進後工程工場を開設』、2023年6月9日)。この新工場は、12インチウエハ換算で年間100万枚以上の後工程の処理能力があるという。
TSMCの後工程の新工場がフル稼働して、3次元パッケージCoWoSを使ったTSMCのGPUが大量に市場に出るのは2024年になると思われる。そして、これらを起爆剤として、TSMCの業績が急回復していくと予測している。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
お知らせ
8月21日(月)にサイエンス&テクノロジー主催で『ChatGPT(AI半導体)が巻き起こす半導体のビッグウエーブへの羅針盤』と題するセミナーを行います。

提供元・Business Journal
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