理想とする働き方やコミュニケーションのあり方を空間に反映していく

――自社にとってプラスに働くコミュニケーションのあり方というと、たとえばどのようなものが挙げられますか?

いろいろありますが、今わりと重要視されるのが「対話」や「雑談」なんです。たとえばコーヒーを取りに行ったときにふとした会話が起点でアイデアが生まれたり、会議室行くほどじゃないけど、5,10分だけ立ったままちゃちゃっと相談できる場所が便利だったりとか。

リモートワークでは、そういった「予約がいらない会話」が格段に減り、テキストに置き換わりました。もちろん、リモートワークでもコミュニケーションをとれないということはないと思います。でも相手の様子がわからないと、ほんの少しのコミュニケーションにも気を遣ったり、予約をしなきゃいけない。横にいれば1~2分で終わるような相談が、まずはアポを取って、30分枠取って……みたいな。たとえば新卒や入社したてのメンバーは気後れしてしまって、結局やらずに小さな悩みが大きな問題になってしまったり。これはプラスに働くコミュニケーションとはいえないですよね。

――どういう働き方ができるようにするのかを空間に反映していくことが大切なのですね。

はい。行動ベースに空間を決めていく考え方を僕らは丁寧にやっていて、たとえばクイックなコミュニケーションと通常業務を行うワークスペースは近い方がいいのか、違う形がいいのかみたいなところをよく考えます。細かい図面を書く手前に、つみきを並べるようなイメージで色々試して、この間に壁を隔てた場合どうだろう、という感じでどんなことが起こるかを議論します。

最初はやっぱり「こんなオフィスにしたいんですけど」というのを席数や面積、予算など具体的な数字でオーダーをいただくことが多いのですが、やはり皆さん会社として成長していきたいというベースがある。ビジョンに向かっていくために、これからどういう成長をしていきたいのかという願いがあってこそ、こんなオフィスを構えたいというところに行き着いていると思うんです。

ただ最初から「オフィス移転をきっかけに成長したいんです!」っていうオーダーをされる企業は稀というかほぼないので、まずそこを紐解くところから進めるようにしています。

組織が何を目指しているのかに立ち返りながら、一方通行で僕らの価値観を押し付けるのではなく「今、御社に必要なのはこういうことなんですかね」っていう折り合いを探しながら進めていくといった感じですね。その結果、実際にオフィスを使う人たちの声を拾い集めるところから始めましょうというケースもあります。