ボッシュ本社は2023年7月10日、ドイツ・シュトゥットガルトで開催された「BOSCH Tech Day 2023」で、水素の生産、圧縮、貯蔵、使用に関する技術、製品などを発表した。
ボッシュは、再生可能エネルギーで作られた電力により製造したグリーン水素は、輸送、建設、製造など、ほぼ全ての分野で重要な役割を果たし、カーボンニュートラルな世界の実現に必要不可欠と位置づけている。そのため燃料電池技術開発など、早くから水素事業に取り組んできており、その技術は多岐にわたっている。
早速、その分野ごとに新開発された製品、技術、考え方などをお伝えしていこう。
■ モビリティ向けPEM燃料電池スタックの開発
PEM燃料電池スタックはモビリティ用途の中核部品で、「PEM」とは「Proton Exchange Membrane」(プロトン交換膜)の頭文字だ。モビリティ用途のスタックは多数のセルで構成され、要求される出力に応じてそのセル数は数百枚に達する。

そのセル内部では、水素と酸素が反応して電気と水を生成し、セル内部のPEMは、アノードとカソードの間で電気が短絡するのを防ぎ、同時に水素分子が酸素側に透過するのを防いでいる。
一方でPEMにはプロトン伝導性があり、水素イオンは透過する。バイポーラプレートの製造で使用される高速レーザー溶接は、ボッシュのみが有する技術工程で、1200メートルにわたる各スタックの溶接部に水素密封性を持たせるために使用されている。
ボッシュは、これらのスタックをドイツのバンベルクと中国の無錫にある工場で製造し、またアメリカなど他の拠点での製造も計画している。
■ 燃料電池の劣化防止・回復プロセス技術の開発
燃料電池は、年数の経過とともに劣化が進行する。具体的には、白金粒子と炭素担体が酸化して劣化し、また一方で白金粒径が増大し、触媒層が薄くなっていく。この問題を解決するために、ボッシュの研究者はこれらのプロセスを緩和する特殊コーティングを開発した。
さらに、高いセル電圧などの劣化に関連する負荷条件を回避するシステム制御の対策により、将来的にはPEM燃料電池の寿命を3万動作時間まで延長することが可能になるとしている。そして、特定の劣化現象は元に戻せる可能性があり、ボッシュの研究者達はその回復プロセスを開発した。