自分で手続きする方法
家族信託は「信託契約書」を作成するところからスタートします。
契約書の作成に特別な資格は不要で、ネットからダウンロードしたひな型を状況に合わせてアレンジすることも可能です。「信託の目的」「信託財産」「受託者の権限」「当事者」「終了時期」「財産の将来的な帰属先」は忘れずに盛り込みましょう。
以下は、家族信託手続きの大まかな流れです。
- 家族会議で契約内容を決定する
- 信託契約書を作成する
- 信託財産を管理運用するための信託口口座(しんたくぐちこうざ)などを準備する
- 公正証書を作成する
- 信託財産の名義変更を行う
契約書作成に当たっては、法律面や税制面を考慮する必要があります。高い専門知識が必要となる場面も多いため、内容が複雑になりそうな場合は、専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
信託契約書の作成は公正証書で
家族信託の契約書は私文書でも構いませんが、法的な有効性を担保する意味では「公正証書」にしておくのが賢明です。公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書のことで、公証役場にて作成を行います。
原本は公証役場にて保管されるため、誰かに捏造される心配がありません。私文書や遺言書よりも法的な有効性が高く、後になって「聞いていない」「言っていない」ともめ事が起こった際に、動かぬ証拠として提示できます。
以下は、公正証書を作成する大まかな流れです。
- 家族会議を開き、信託契約書の内容を作成する
- 委託者と受託者が公証役場に出向き、公証人に契約書の内容を伝える
- 当事者の内容を基に、公証人が公正証書を作成する
- 委託者・受託者の前で公証人が作成した内容を読み上げる
- 正本・謄本を交付する
信託口口座を開設するケースも
「信託口口座」とは、受託者が信託財産を管理する口座です。受託者個人の口座とは独立して開設されるもので、信託財産の管理口座であることが一目で分かるように、受益者✕✕信託受託者✕✕」「✕✕信託受託者✕✕」といった口座名義が用いられます。
親が認知症になっても金銭の管理に困らない
信託財産は必ず信託口口座で管理しなければならないという決まりはありません。ただし、預貯金を委託者名義の口座で管理していると、認知症が発覚した際に金融機関から口座を凍結され、預金管理が困難になる可能性があります。
口座凍結にかかわらず、受託者は委託者の預金を勝手に引き出すことはできないため、預貯金の管理については事前に話し合っておく必要があるでしょう。
信託口口座は、信託された預貯金を管理するための口座です。金銭を信託財産として信託契約を締結した後、委託者の預金口座から信託口口座に金銭を移せば、受託者は自分の判断で入出金ができるようになります。
口座は委託者および受託者の個人口座とは別のものであるため、委託者や受託者が破産したり、差し押さえを受けたりしても、預金に影響はありません。
開設可能な金融機関の例
信託口口座が開設できる金融機関は、それほど多くはありません。事前に確認をした上で、開設の準備を進めましょう。
三井住友信託銀行の場合、原則として「口座預金残高が3,000万円以上となる人」が対象で、申し込み後は銀行による信託契約のチェックが行われます。申し込みをすれば必ず口座開設ができるわけではない点に注意しましょう。
また信託口口座開設の相談と申し込みは、信託契約書の作成などを行った専門職(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士)を通じてのみ受け付けが可能です。
信託口口座の申し込みの条件やサービス内容は、金融機関によって異なります。条件に合致せず、口座開設が不可の場合は、受託者の個人名義で作成した普通預金口座を信託専用口座とする手もあります。
この場合、委託者と受託者の財産の分離が難しくなるため、慎重に取り扱う必要があるでしょう。
出所:民事信託サポート | 資産管理・承継 | 三井住友信託銀行