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受託者ができないこと
家族信託を利用するには

受託者ができないこと

家族信託では、受託者が全ての財産を管理できるわけではありません。信託契約書を交わす前に、「受託者ができないこと」を明確にしておきましょう。特に、預貯金と年金の取り扱いについては注意が必要です。

委託者の口座から預金を引き出すこと

信託契約書を金融機関に示しても、委託者の口座から預金は引き出せません。金融機関に預けている預貯金は「金融機関に対して寄託された金銭債権」としての扱いです。

「譲渡禁止特約」により、金銭債権は勝手に名義変更ができない決まりとなっており、受託者が委託者の預金を引き出すことは事実上不可能です。

一方、預貯金口座から引き出した「金銭」は信託財産の対象となります。したがって、信託契約書を交わした後は、委託者の口座から受託者名義の管理用口座(信託口口座)に預貯金を移し、管理用口座で受託者が管理する流れとなるでしょう。

農地や年金の管理は制限あり

「農地」として登記されている土地は「農地法」による制限があり、農業協同組合や農地中間管理機構などが受託者となる場合を除いては、家族信託はできないのが原則です。

ただし、農地を宅地等に転用するケースにおいて、市街化地域は農業委員会への届け出、市街化調整区域は農業委員会による許可を条件に、家族信託の対象とすることが可能です。

また、「年金受給権(年金を受け取る権利)」は、国民年金法や厚生年金法で譲渡が禁止されています。たとえ子どもや配偶者であっても、信託は認められていません。

出所:農地法 | e-Gov法令検索

家族信託を利用するには

家族信託を利用するには、委託者と受託者の間で「信託契約書」を交わす必要があります。自分たちでの作成(私文書)も可能ですが、後々のトラブルを避けるためにも専門家に依頼した方が安心でしょう。契約書を「公正証書」で作成する重要性についても解説します。

専門家に依頼する方法

家族信託を自分たちで進めようとすると、「受託者を誰にすればよいのか」「どの財産を信託するのか」「契約書はどう作成するのか」といった壁にぶつかり、なかなか前に進まないケースもあります。

家族会議を開くにしても、家族信託に詳しい指南役や相談役がいなければ、予想外のトラブルが発生するかもしれません。

家族信託の相談先として頼れるのが専門職(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士)です。多少の費用はかかるものの、財産の名義変更までを一括して任せられる上、贈与や相続、遺言に関する相談もできます。

家族信託手続きにかかる料金は、信託財産の評価額や種類などによって変わるため一概にいくらとは決められません。数十万~100万円とみておきましょう。