なんか、過去10年のFFも、ストリートファイターシリーズも、一応根強いファンはいたわけですよね。好きな人は今でも「いやあれ名作だから!」って言ってる人も結構いる。
ただ、ある意味で90年代〜00年代初頭の日本ゲーム黄金時代のブランドの遺産で食っていたみたいな側面は明らかにあって(笑)、発売延期が重なったり、あまりに説明不足で難解であったり、しょうもないバグが大量に残っていたり、いわゆる「モノ売るってレベルじゃねーぞ」的な混乱が重なっていて、「ああ、もう日本ゲームの栄光は失われていくんだね」という感じではあった。(モンハンは比較的新しいシリーズなので事情は違いますが、国内人気に比べて海外で全然理解されてなかったのは似ています)
そういう古参タイトルが、急激に「グローバルに歯車が噛み合ってきた」感じになってるのは何なのか?みたいな事を考えてみたいんですよ。
なぜかこの考察が大事かといえば、ローカルな「独自路線の強み」と「グローバルな流行」とのすり合わせ・・・って、あらゆるビジネス領域において日本企業にとって大問題のテーマだからです。
その部分において、過去10年はお世辞にもうまく行ってなかったが、今は妙に歯車が噛み合いはじめている…という部分にある原因を考察してみたい。
それは名付けてみれば、『情報通な引きこもり』戦略みたいなものがあるんじゃないかと私は考えています。
1. 国内にいながらにして海外の評価を物凄く「リアルに」感じられる時代今回、TwitterでFF16の体験版がマジで良かったよ…って言ってる国内の評判を見て、海外ではどうかな?と思って何気なく検索したんですけど、「こんなにリアルに評判がすぐ伝わってくるんだ」という状況に衝撃を受けました。
またYouTubeさんが気を利かせて、一個見たら次々オススメしてくれるんで(笑)、結果としてこの一週間色んな国、色んな人種のリアクション動画(ただし英語圏だけですが)を見ることになりました。
特に以下の二つなんかは面白かったので、飛ばし飛ばしですけど2時間のプレイ動画配信を全部見てしまった。(結構上の世代の配信者は10分ぐらいの感想だけシェアする人が多いんですが、若いZ世代はだいたい2時間のプレイをまるごと配信してる人が多くて文化の違いを感じます)
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↓無意味に「かめはめ波!」とか叫んだりするドラゴンボール好きのアメリカ黒人配信者のOmegaProさん。
でも評価は結構”辛辣だけど的確”という感じで、
「ここまでの部分、JRPGでよくある陳腐な長いモノローグみたいなのが全然なくて超いいじゃん。”ゲーム・オブ・スローンズ”的な、6歳児向けじゃなくて大人向けストーリーって感じだね」
…みたいな辛辣な意見を言うかと思ったら、迫力ある召喚獣バトルのシーンで
PS5買って良かった〜!!!って俺今初めて思ってるぅ〜!!!
…とか絶叫したりとか、率直な語り口がいい感じ。ちょっと出てきたラブシーン的な部分で「うぉお・・・これFF7リメイクでティファとクラウドでお願いしたい」とか言うのもウケました。
この人↑はしょっちゅう「それはギガチャドだ!」「これはマジでギガチャド的瞬間だね」みたいなことを言うんですが、なんじゃそりゃ?と思って調べるとすぐ解説してくれてる動画が見つかるのが今の時代の凄いところだなと思います。
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もう一個、いかにも”kawaiiカルチャー”好きのアニメオタク女子…って感じのアメリカ人女性配信者のSnaxanさん↓
この人は凄い人間関係の洞察が鋭くて、
あ、この母親、主人公のこと嫌いなのね。なぜかしら?ああ・・・なるほど、才能次第で子供を愛せない母親っているもんね・・・ うわー、このビッチ、絶対あとで裏切るんじゃない?そうなっても驚かないわ。(→図星だった) あ・・・この兵士、絶対”トロイの木馬”的攻撃狙ってない?(→図星だった)
…みたいな感じだし、配信中も視聴者がおいてけぼりにならないように操作感とか、設定とかについて常に客観的に第三者目線で理解できる解説する感じが頭良いんだなあ…っていう印象でした。
「trojan horse attack(トロイの木馬攻撃)」とか「jeopardizing(〜を危険に晒す原因になる)」とか、知らなかったインテリっぽい言葉がたくさん出てきて勉強になりました。
あと、例えば主人公のキャラクターが幼馴染の女の子の肩を抱き…かけて結局手を伸ばしただけで終わったところ(男性配信者はほぼ気づかない 笑)をめざとく見つけて爆笑してるのとか、笑いのツボが「健全なタイプの恋バナ女子会」みたいで凄い面白かったです。
他にも、「FF16 demo review」で検索すると次々上がってくる(しかも一個見たら次々サジェストされる)のがあるので、ご興味があればチェックしていただければと思います。
2. 言語の障壁を技術が超え始めて、「情報通な引きこもり」戦略が可能になったともあれ、こういうゲームプレイ動画、私は今まで国内のものでもあまり見たことがなかったので、ましてや英語で見てるのに、本当に「友達の家でワイワイ言いながらゲームプレイしてる感じ」なのにはびっくりしたんですよね。
伝わってくる情報の「リッチ」さが10年前とぜんぜん違う。本当に目の前で友達と細かい細かい細部のニュアンスまで含めて「あーそうだよねー」って感じで話してるレベルで情報が伝わってくる。
英語の得意な人も苦手な人もいると思いますが、普通に大学受験の時に英語はまあまあ勉強してたよ…というレベルの読解力があれば、チャレンジしてみると世界が変わると思いました。(上記二つはほんと面白い配信者だと思ってので、試しにトライしてみては?)
私も英語ネイティブ配信者のマシンガントークを全部音だけで聞くのはシンドいレベルでしかないですが、今はYouTubeの字幕AIがあるから、自分が興味がある分野であればかなり理解できる人は多いと思う。
さらに言えば、現時点ですら”自動翻訳”字幕もまあまあ理解できなくもないレベルになってますし、あと数年すればマジでストレスなく言語を超えて多言語配信を理解しあえる世界が来そう。
この「技術の変化」がもたらしてるのは、例えば10年前に国内にいて伝わってきていた「海外の評判」みたいなのとは全然レベルが違うリアリティを持った国際的コミュニケーションのあり方なんですよね。
上記動画を見てると、本当に色んなところの細部で(キャラの容姿が海外のあの芸能人に似てるとか似てないとか、犬とかチョコボのここの動きが超かわいいとか、ワイバーンとかクライヴとかいう名前の印象が英語圏から見てどうかとか、あとFFのシリーズ共通のバトル終了後のファンファーレを皆同じように鼻歌でマネするとか)、「へえ、そういう感想持つんだ」「あ、そうそうそう思うよね俺も思ったわ!」みたいな事がある。
あと小ネタとしては、韓流ドラマ見てる日本人が、韓国語知らないなりに単語だけ真似してみたくなるみたいに、英語配信者が日本語知らないなりに、父親キャラが出てきたら「トオサーン!」って叫ぶとか(笑)、そのレベルで日本語コンテンツがどういう風に受け取られているかが生身でわかる。
これは、別に「海外の反応を収集するぞ!」みたいな事を意識高く思ってる必要すらないんですよね。
たまたま一個見たら勝手にYouTubeのAIがオススメしてくれるんで、寝る前にソファに座ってスマホやタブレットでYouTube開いたら、サジェストされた動画を脳死状態でクリックしてるだけで海外ファンの反応を延々とナマで見られる…というこの「日常と完全に海外が繋がってる感じ」が本当に過去と違うなと思う。
今は「例」としてYouTubeの話をしていますが、それに限らずこういう変化はTwitterからTikTokからその他あらゆるSNSプラットフォームと新しい翻訳関連AI技術が浸透することで、特にここ4−5年の間に全世界で急激に起きた変化としてありますよね。
で、ファイナルファンタジーもストリートファイターもモンスターハンターも、こういう「世界中の反応をめちゃリッチな形で受け取れる時代」になったからこそ、「自分たちのコアの価値を煮詰める」ことと「世界の潮流とフィットさせる」ことを両立できるようになったのではないか?と私は考えています。
要するに、自分たちのコアの価値を守るための「引きこもり要素」と、世界のトレンドに合わせるための「情報通要素」というお互い矛盾した二つの要素を、簡単に同時に満たしやすい環境になってきていると言える。