これまでのFintechはリテラシーの高い人の課題しか解決していない

——新しい家計管理サービスとしてFintechに参入されましたが、これまでのFintechサービスで解決されていない課題はあるのでしょうか?

これまでのFintechサービスで、当たり前のようにクレジットカードを発行したり、株や投資の商品を買ったりすることはできるようになっています。

ただ、それらのサービスも浸透し切ってはいないでしょう。ITリテラシーが高い人や金融の知識を持っている人でないと、まだまだFintechサービスのメリットを享受できていないのではと考えています。例えば、銀行のオンラインバンクも、日本人の全員が日々使えている訳ではないですよね。

特別な知識やスキルを持っていない人も簡単に使えるプロダクトを作ることで、もっと裾野が広い人に届けられる。そのようにして新しい市場が生まれる構造のビジネスについて、ジョブ理論では“無消費”の市場と呼んでいます。

——“無消費”の市場を作るためには、何が必要なのでしょうか?

世の中にすでに存在する分かりやすい課題はほとんどが解決されています。なので、ユーザー本人ですら気づいていないような課題を汲み取って、既存の代替製品より優れたプロダクトを作れるかが重要です。

そうでないとtoC向けのプロダクトは生き残れないというか、そもそも使われる段階までいかないのではと思っています。

——そこから事業として成長させるためにはどうすればよいのでしょうか?

ユーザーの本当の課題からプロダクトを作ることと、継続的に利益を生み出して規模を追求することを掛け算することが鍵になります。

「その事業が上りのエスカレーターに乗っているか?」を考えます。社会にある変化が起きていて、その変化によって事業が自動に伸びていく構造が作れるかどうか。

例えば、政策によってキャッシュレス比率が上がることや共働きが増えることがB/43が伸びる社会背景になります。そのように、ユーザーの変化によって押し上げられていることが大事だと思います。

もちろん最初から全て見極められるものでもないので、仮説を持ってリリースした後にピボットするような判断も必要です。

——上りのエスカレーターでは競争も激しいのではと思いますが、その中で勝ち切る方法を教えてください。

その市場に賭ける時の参入時期を見極めることを意識しています。そして、参入した後に勝つために大切なのは、その事業のゲームの構造を解像度高く把握すること。

新しい市場を作る中で答えはないとしても、近しい事業や海外のモデルなどをリサーチする中で類推してゲームを理解することが勝ってキャズムを超えることにつながります。