(本記事は、辻盛 英一氏の著書『営業は自分の「特別」を売りなさい』=あさ出版、2018年10月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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営業には「6つのステージ」がある

営業力を高めるために、「特別」を見つけ出すのと同じくらい大切なのが、「あなたが今、営業のどのステージにいるか」を知ることです。

「営業」という仕事は、一見、「お客さまに商品を買ってもらう」というシンプルな構造に思えます。

でも実際は、ステージによって販売方法が大きく異なるのです。

「特別」を最大限、効果的に使うためには、「今、自分がどのステージにいて、どんなやり方をしているか」を知らなければなりません。

私は、営業マンがお客さまに接するときのスタイルには、次の6つのステージがあると考えています。

ステージ(1) 営業すればするほど嫌われる ……「パワーセールス」
ステージ(2) とにかく数で勝負 ……「行動力セールス」
ステージ(3) お客さまのためになることを率先して行う ……「ギブ&テイクセールス」
ステージ(4) 対価を求めない ……「コンサルティングセールス」
ステージ(5) 営業のスターとなり、神さま扱いまでされる ……「ファンセールス」
ステージ(6) 教祖のような存在となり、崇められる ……「カリスマセールス」

この「営業の6つのステージ」は、私の20年近くに及ぶ営業経験と、その間に接してきた6000人もの営業マンを観察し、分析を重ねて得られた結論です。

「ステージ(1)パワーセールス」から「ステージ(6)カリスマセールス」まで、6段階に順番に進化していきます。

営業の仕事に携わっている人は、1人の例外もなく、必ず「6つのステージ」のどこかに当てはまリます。

ただ、ときには「ステージ(1)パワーセールス」と「ステージ(2)行動力セールス」の要素を両方持ち、2つのステージの間の段階にいることもあるでしょう。

また、「ステージ(3)ギブ&テイクセールス」になったのに、「ステージ(2)行動力セールス」に逆戻りしてしまう人も存在します。

しかし基本的には、誰もが「ステージ(1)パワーセールス」からスタートし、次は「ステージ(2)行動力セールス」に移るのです。

そして「ステージ(3)ギブ&テイクセールス」「ステージ(4)コンサルティングセールス」と進み、最終的には「ステージ(5)ファンセールス」「ステージ(6)カリスマセールス」に到達します。

あなたは、今、どの段階にあるのか?

そして今、営業にどんな目標を持てばいいのか?

「特別」を活かし、楽しく成果を伸ばしていくためにこの6段階のステージを頭に入れて取り組んでください。

営業マンの半数以上が最初のステージで立ち往生している

「営業の6つのステージ」がどんなものか、それぞれ簡単に説明しましょう。

ステージ(1) パワーセールス

「自分が売りたいもの、売らなければならないものを押し付けて売る」のが、「パワーセールス」です。

ハッキリと言葉に出さないまでも、「とにかく、買ってくれ」と、お客さまにプレッシャーを与え、お金を払ってもらおうとします。

自分はそんなふうに、強引にものを売ることなどしていない……。あなたは、そんなふうに思っているかもしれません。

しかし営業マンの半数以上が、実際は「パワーセールス」をしています。

たいていの営業マンは、商品知識を学ぶ程度の研修を受けたくらいで現場に送り込まれます。そのため、「営業とは、与えられた商品を売る仕事」だと思い込んでしまい、せっせと「パワーセールス」を行い、営業すればするほど、お客さまには嫌われる結果になります。

そんな自分に疑問を感じて仕事が嫌いになり、「辞めたい」と考える人が多出するのがこのステージです。

ステージ(2) 行動力セールス

「ひたすらたくさんのお客さまに会うことで成績を上げようとする」のが、「行動力セールス」です。

「パワーセールス」を重ねたせいでお客さまに嫌がられ、会いに行くお客さまの数が減ってしまった。また逆に、特定の人たちに喜んでもらえる自分なりの売り方を見つけ、成約ができるようになった。

そのため、ひたすら多くのお客さまに会って、結果を出そうとするのです。

プライベートを犠牲にしてでも、「仕事のためだから」と励んでいるのがこのタイプ。営業マンのおよそ30%が、「行動力セールス」をしています。

ステージ(3) ギブ&テイクセールス

「行動力セールス」では、とにかくいつも、新しいお客さまを追いかけなければなりません。

つねに「次に行かなければ」というプレッシャーがかかり続けるため、やがてはその状況を打破したいと考えるようになります。

そこでたどり着くのが、「ギブ&テイクセールス」のステージです。

実際、「行動力セールス」で大勢のお客さまに会っていれば、やがて「お客さまの悩みや困りごとを解決してあげれば、契約に結びつく」ということに気づきます。

すると「お客さまに何をしてあげたら喜ばれるかを考え、先まわりして実践」することができるようになります。

これが「ギブ&テイクセールス」というステージの売り方です。

「ギブ&テイクセールス」をしている営業マンは、全体のおよそ15%。

営業の95%は、「パワーセールス」「行動力セールス」「ギブ&テイクセールス」の、いずれかのステージに当てはまっているわけです。

ステージ(4) コンサルティングセールス

「ギブ&テイクセールス」を続けていると、たとえ、商品の販売につながらなくても、「お客さまに何かを与えることそのもの」に喜びを感じるようになります。

これが「コンサルティングセールス」のステージです。

「コンサルティングセールス」になると、自分から商品を売ろうとすることは、ほとんどなくなります。

見返りを期待せずに様々な相談にのり、お客さまの悩みや困りごとを解決する。その結果、まわりに信頼され、自然に、営業としての売上が生まれていくのです。

「コンサルティングセールス」をしている人は、営業マン全体の3%ほどになります。

ステージ(5) ファンセールス

「ファンセールス」、そして次の段階の「カリスマセールス」のステージに到達している人は、それぞれ全体の1%以下だと言えます。

「ファンセールス」は、言ってしまえば「営業マンがアイドルになったようなもの」です。

アイドルがある商品について、「これを愛用している」とインスタグラム(Instagram)で発信すれば、ファンはその商品を買いに走ります。

同じように、あなたが「これ、いいですよ」と勧めれば、お客さまは「いいもの」だと信じて、疑わずに買ってくれる。

それが「ファンセールス」のステージです。

ここにいたるまでには、営業とお客さまとの間に、絶大な信頼関係が築かれていなければいけません。日々の積み重ねがものをいうステージといえるでしょう。

ステージ(6) カリスマセールス

「カリスマセールス」と「ファンセールス」は、売り方としてはほとんど同じように見えます。

ただ、応援してくれる人の種類が違います。

「ファンセールス」の「ファン」は、「カリスマセールス」においては「信者」となり、何があってもサポートをし続けてくれます。

芸能人を例にあげれば、矢沢永吉や長渕剛は、「カリスマセールス」のステージにいるといえるでしょう。

雑誌やコマーシャルなどのマスコミにはほとんど登場せず、コンサートもめったに開かない。それでも、新曲を出せば売れますし、グッズもコンスタントに売れています。

精力的に活動しているわけではないのに、支え続けるファンがいる。それが、「カリスマセールス」です。

「カリスマセールス」は、「なろう!」と目指して、なれるものではありません。

「ファンセールス」のステージに到達するまでに築き上げた、お客さまとの信頼関係はもとより、扱う商品に対する情熱や仕事に対する姿勢など、どこかに特別な個性を持ち、強力に人を惹きつける人がカリスマになり得るのです。

この6つの営業ステージを段階を踏んで上がっていくと、営業という仕事の楽しさ、面白さがわかってきます。

それにはまず、自分のステージについて理解し、上を目指す理由を理解しましょう。営業の仕事をどんどん楽しんでください。

(※本書にはあなたが今、どんなステージにいるかがわかるチェックリストが掲載されています。)

「パワーセールス」は喝上げと同じ!?

営業マンなら誰でも必ず通るのが「ステージ(1)パワーセールス」です。

「パワーセールス」とは、お客さまに欲しくないモノをムリやり買わせる営業スタイルです。

実は営業マンの半数以上が、自身がパワーセールスを行っていることを自覚していません。なぜなら「買ってもらえるよう説得する」のが営業の仕事であると考え、その通りにお客さまと話をしているだけだからです。

会社から与えられた商品がいいもの、お客さまの役に立つものだとは思えず、営業をするたびに罪悪感を抱くというジレンマに陥りながらも売り込んでいる人は少なくありません。

代表的なパワーセールスには、新聞の勧誘のような景品や特典をチラつかせて契約をお願いする方法、サンプルを配る化粧品営業や試着や試乗をさせる洋服や車の販売など「一度、使ってみてください」と試してもらって買う気にさせる方法などが当てはまります。さらに「今だったら2割引ですよ」「安くしておきますよ」と、価格を下げて購買意欲をそそるのも、パワーセールスだといえるでしょう。

「そうは言っても結局はお客さまが欲しくて買っているのだから、パワーセールスではないのでは?」と思う人もいるかもしれません。

でも、パワーセールスには、お客さまの本当のニーズを確認していないという最大の問題があります。

お客さまにニーズがあるのではなく、あの手この手を使って欲しくなるように煽りたてているだけだからです。

たとえて言えば、家から仕事場に荷物を運ぶことが多い人に、高級スポーツカーを販売するようなもの。

高級スポーツカーは、たしかに性能が高くスピードが出ます。シートも上質で座り心地もいいでしょう。けれども荷物を多く運ぶ機会が多いのであれば、もっと相応しい自動車があります。

また、もう1つのパワーセールスの問題は、「お客さまにストレスをかけている」という点です。

言い過ぎだと思われるかもしれませんが、私は「パワーセールス」は、喝上げしているのと同じくらい、お客さまにとっても、また営業マンにとっても、悲惨な状況だと考えます。

欲しくもないものにお金を出してもらうのは、「今、自分にはお金がないから、1万円ちょうだい」と、ねだってお金をもらうのと変わりません。

また、営業マンにとっても「ムリやり買わせている」という気持ちが常につきまといますから「人の役に立っている」と思えず、営業すればするほど気持ちがすさんでしまうのです。

誰も喜ばないパワーセルスからは早く抜け出しましょう。

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辻盛英一(つじもり・えいいち)
大阪市立大学経済学部卒業、三井住友銀行を経てアリコジャパンに入社(現メットライフ生命保険)。13年連続、トップの成績を収める。その手腕が注目され、社内外から、営業手法を学びたいと人々が訪ねてくるように。現在は法人専門の保険代理店、株式会社ライフメトリクスを経営する傍ら営業マン向けの研修を主催。年間300日はグラウンドで学生を指導していることから、ワークライフバランスの重要性を自ら体現している。
 

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