これのどこが自然なのか。

ここまで当事者に近い人物に発言させてもよいものなのか、矛盾や問題や違和感を一切感じ無かったのなら、報道機関としてトップからガバナンスが壊れている。

ジャニーズ忖度を問題と感じつつ放置しているのではなく、違和感すらなく、社長が「自然」と表現するのであれば、喜多川氏の性加害疑惑を追及できるはずもない。

テレビ各局は異常な忖度を続ける一方、政治家と行政が動き始める。

テレビ朝日の公式サイトでは定例会見の要旨が公表されているが、サンデーLIVE!!の東山さんの発言に関する社長コメントはすべてカットされている※。要旨とはいえ最も重要な個所を載せない理由は何なのか。

※参照・篠塚浩社長 社長会見(5月30日)要旨 社長定例会見 テレビ朝日

BBCの告発番組から始まった一連の騒動を受けて、立憲民主党は児童虐待防止法の改正案を提出している(与党側は協議を拒否)。立憲によるヒヤリングには告発者の他、法務省やこども家庭庁なども出席した。立憲は社長の景子氏にもヒヤリングを要請したが断られたとも報じられている。

野党とはいえ、すでに省庁も巻き込んで国会も動き始めた。6月には各局の株主総会も開催される。株主の圧力に耐えられるか?と前回の記事では書いたが、政治と行政が動けばテレビ局の監督官庁である総務省も動くことになる。そうなっても死人に口なしの対応が今後も続けられるのか。

政治家と行政まで動き始めた段階で、各局は番組の放送もタレントの出演もこれまでと同じで、静観・注視すると明言しており、これまでの立場を1ミリたりとも変えていない。各局は放送免許を総務省から与えられなければビジネスが成り立たない規制産業の立場でありながらだ。筆者は芸能界やテレビ局の常識を一切知らないが、ビジネスの常識から見れば「異常」を百回繰り返しても足りない状況だ。

ジャニーズ忖度が報道内容、報道機関としてのあり様にまで影響を及ぼしているとしたら、それが監督官庁から指摘・指導されるような事態に発展したら各局の経営陣はどうなるか。少なくとも社長が辞任する程度で済まない。

ジャニーズ事務所の公式リリースでは、性加害を知らなかった発言、名ばかり取締役、取締役会を開いていなかった、事実関係は認めていないのに再発防止を明言するなど、大量のボロが露見したが、テレビ朝日の社長会見も同じく多数のボロが露見している。

企業として、報道機関として、そろそろ常識的な対応を始める時期だ。

中嶋 よしふみ  FP シェアーズカフェ・オンライン編集長 保険を売らず有料相談を提供するFP。共働きの夫婦向けに住宅を中心として保険・投資・家計・年金までトータルでプライベートレッスンを提供中。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。東洋経済・プレジデント・ITmediaビジネスオンライン・日経DUAL等多数のメディアで連載、執筆。新聞/雑誌/テレビ/ラジオ等に出演、取材協力多数。士業・専門家が集うウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインの編集長、ビジネスライティング勉強会の講師を務める。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年6月2日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。