
テレビ朝日・ジャニーズ事務所 Wikipediaより
テレビ朝日の社長、一番の問題発言は「相談している」。介入疑惑に関する社長のコメントは以下の三つだ。
東山さんが「発言すること」を番組側は知っていた。キャスターでジャニーズ事務所所属なのでこの件に発言することは自然である。 「発言の内容」は基本的に東山さんの考えで、打ち合わせをした上での発言である。 事務所による報道介入疑惑について「基本的にはあうんの呼吸だが、発言をするかしないかは、われわれから相談をしている」。
1.2とも様々に問題はあるが、一般論としてキャスターが事前にコメントをする・しないやコメント内容を番組側と打ち合わせすることはなんら問題ない。数百万人の視聴者を相手にする以上、正確性が求められることはもちろん、トンチンカンな発言をしては本人と番組の信用に関わる。
しかし三つ目の発言は以下の通りとんでもない内容となっている。
事務所による編集権への介入を疑う声については「編集権、編成権はわれわれにある。基本的にはあうんの呼吸だが、発言をするかしないかは、われわれから相談をしている」と話した。
※【引用】テレビ朝日 東山紀之の「後輩たちに待ってもらった」発言「打ち合わせの上」ジャニーズ性加害問題「対応策の実行注視」
編集権と聞いてピンと来ない人は多いかもしれないが、何をどのように伝えるか、メディアが自ら判断・決定する権利を指す(編成権もほぼ同じ意味)。これを他者に譲り渡すことは決して許されない。報道の独立性とも言われる。
この話の例としてよく挙げられるTBSのオウム事件は、編集権・独立性をオウム真理教に譲り渡したとして大問題になった。
TBSのオウム事件は、番組スタッフがオウム真理教に批判的な弁護士を取材した映像を放送前にオウム側に見せてしまい、それがオウムによる弁護士殺害につながったことで表沙汰となった。日本のテレビ史上・報道史上に残る大事件だが、これは弁護士が殺害されたことが大問題というわけではない。
そもそも放送前の映像を外部に漏らしたこと、しかもトラブルの当事者であるオウム真理教に漏らすという編集権を自ら放棄・侵害する報道機関として自殺行為であること、それが結果的に殺害につながったことから歴史に残る大事件となったわけだ。
筆者は「待って貰った」発言について書いた記事でこれはTBSのオウム事件と同じだと指摘した。なぜなら放送前日に、東山さんがコメント予定であることをジャニーズ事務所が代理店に一斉メールを送信した、つまりジャニーズ事務所が事前に放送内容を知っていることが報じられたからだ※。
※【参照】【独占入手】ジャニー喜多川氏の性加害 現役タレントで口火を切るのは東山紀之!『サンデーLIVE!!』で言及か、事務所が代理店に送っていた“予告”文面
事前情報と東山さんの「待って貰った」発言を合わせて考えると、放送前に番組と事務所が話し合いをしているとしか思えない内容だった。テレビ朝日は介入疑惑について取材では否定したが、社長会見では編集権は我々にあると言いながら、明確に「われわれから相談をしている」と発言した。介入どころか自ら相談をしていた。ジャニーズ事務所が放送内容を知っているのも当然だ。