⑬ サイパン辺りで日本は敗戦を覚悟した。だが国民・国土より大切な天皇。情報戦にも負けて最初から可能性がゼロだったのに、天皇を守る「条件付き仲介」を、ソ連スターリンにお願いし続けた。しかし裏切られて侵攻されたことをみれば分かる。スターリンは、相手が悪過ぎた。ソ連は頼れないという一報まで欧州から入ったのに、諦めなかった。意味がないことに時間を費やし、降伏勧告を受け入れず、結局原爆を投下された。8月14日に受諾しなければ、多分半年くらいは延びて本土決戦、東京大空襲のような焼夷弾による無差別爆撃、毒ガス使用可能性、日本陸軍だけでなく、日本の民間人も多数の人間が死んでいた。それどころか北海道の半分かそれ以上が、ロシア領としていまに至った可能性もある。

一方の沖縄返還。日米の密約を暴いた時、筆者は返還の切っ掛けになったCIA文書を探し出した。沖縄の地元民が、本土復帰を望んでいるという報告だ。お人好しの米国は1000人くらいの米海兵隊が死んだ沖縄を返還した。米議会など米国内の強い反対を押し切った。繊維交渉とか幾つか理由があるが「民主主義」が大きな理由だ。あのまま米軍が沖縄に居座って占領を続けても、世界の世論は殆ど文句言わない。だがロシアはどうか。北方領土をみよ。ロシアが返還しますか?あり得ない。いまだに北海道の殆どがロシア領とか想像したくない。

米はソの参戦を最初は望んでいた。日本を降伏させるためネコの手も借りたかった。だが原爆が完成して、ソ連の参戦、参加が不要になった。スターリンが攻撃したらなにをやるか分からない。日本の半分が占領されるかもしれない。だからスターリンが関係する前に原爆利用で日本を降伏させた。米側の投下理由。一番大きなソ連への威嚇は、2番目の理由、日本を降伏させたかった。この2つは明確に分けられない。一部は重なり合っている。

原爆無しで降伏したか? 答えは「した」。だがその結果は「原爆あり」と比べて良かったのか?実際にそうなったが、原爆ありの8月14日終戦から多分半年先くらいに戦争終結になっただろう。その場合、本土決戦で日米双方の多数が死んでいた可能性がある。原爆投下があっても無くとも、スターリンは日ソ不可侵条約破って日本を侵攻していた。いまも昔も強い領土欲だけでなく、ヒットラーにやられた恨みを日本にぶつけた要素もある。原爆無し、つまり降伏がかなり遅れた場合、ほぼ間違いなく、スターリンは北海道を占拠していただろう。つまり原爆無しの降伏はありと比べて、より日本の国益を損なっていたといえる。日本人はすぐに米国の世論は、とかいう。それも大切だが、筆者がやってきたように、欧州、アジア諸国、中国、ロシアでも議論したらよい。米国だけでなく、「非米」勢力も含む世界の識者と話したら分かる。

⑭2022年9月。プーチンの演説。「これは孫とひ孫のための戦場だ。奴隷状態で魂を破壊する実験から彼らを守るためだ。思い出して欲しい。米国は世界で唯一2回も核兵器を使用、広島と長崎を壊滅させた国だ。そのような先例を作った」

これに対してウクライナ出身。ハーヴァード大上級研究員。ロシア・ウクライナなどの核兵器を研究するマリアナ・ブジェリン (Mariana Budjeryn) が述べた。

「プーチンは広島・長崎の件を持ち出した。とても気になる。前回の戦争で、核が使われたケースは、核を持たない日本に対するものだった。それは戦争の”早期終結”と”無条件降伏”を引き出すものだった。

ウクライナには独自の抑止力がないし、同盟国による抑止力もないのです」

日本に対する原爆使用により、徹底抗戦を主張し続ける日本から「無条件降伏」を引き出せたというのが日本以外の常識といえる。

⑮ヒロシマの原爆記念碑に刻まれている「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」

その碑文の主語は何か。書いた被ばく者の雑賀教授自身や多くの人は「我々=人類の過ち」とかいう。違う、「人類」とか言って誤魔化すな。「過ち」の主語も誤魔化すな。再発防止のために逃げないで史実を元に詰めた議論をするべき。安全保障を中心に日本は大体が「なあなあ」で終わらせる。議論を極限まで詰めない。「知恵を出し合って、話し合いで、、」こう言えば、一件落着。永遠にやり続けるのか。まず1945年の原爆投下責任は、米国(英加も)にある。日本や他国がやったことと同じように「国際法違反」「戦争犯罪」の側面もある。当然糾弾されるべき。

だがなぜ原爆が使用されたのか?その理由は?日本と米国など連合国の双方、なにがどこまで正当化できる?国際政治なので、元を辿れば非常に複雑で双方に言い分、お互いさまの面がある。

だが満州侵略から始まり、開戦前から勝てないと分かっていた戦争を真珠湾攻撃で始め、国民・国土より大切で重要な天皇を守るため、降伏しなかった当時の日本の指導者に、ほぼ全ての責任がある。自国が始めた侵略行為、さらに天皇を守るために降伏しなかった。日本が侵略行為を始めなければ原爆投下まで行かなかったと欧米だけでなく、世界の多くがそう思っている。自国の責任を棚に上げて米国を責めるやり方、そんな主張がどこまで通用するか、米国だけでなく、世界と議論するべき。

日本人の多くが、米国では「戦争を終わらせるために原爆を使用したと教えられている」と、あたかもそれが間違いのように思い込みで言う。違う。米国以外の世界に聞いたら良い。殆ど全てが「日本が自ら侵略戦争を始めて、天皇を守るため降伏しなかったので、原爆が使用され、日本が降伏して、第二次大戦が終わった」とする。「和平の道を探していたボロボロの日本に、必要もない原爆を落とした悪魔の米国」という日本の考えを支持しないことが分かる。

⑯ 今回のサミットでも再度出た。米国は謝罪しないのか?上記が米国だけでなく日本以外の常識。謝罪はあり得ない。外交音痴で全てを首席補佐官にお任せだったオバマ。核拡散防止が大きな理由で、目標として廃絶を言った。その流れでヒロシマまで来た。

日本の自己責任、日本が始めた侵略戦争が切っ掛けだと分かっていたはずの安倍元総理。代わりに真珠湾に行くことを交換条件にした。だがオバマは重要な本館で展示を見ずに、形式だけ形作りのため、ロビーで用意された数点を10分だけみた。

今回その「オバマ越え」を岸田総理は狙った。バイデンがなにを見たかは非公開。史実を直視しない日本人が望む身勝手な「後悔」「懺悔」「謝罪」などを期待しても、廃絶をいうオバマでさえも、100%あり得ない。みんな史実を知っている。あくまでも、自分で戦争を始めただけでなく、最後まで無条件降伏を受け入れなかったため、原爆を投下された日本の責任。米国民だけではない、親米だけでなく、非米国にも聞いたらよい。当事者の日米対立にしないで、原爆使用に関して、第三者の世界各国がどうみて、考えているか、少し事実を直視するべき。

⑰ G7の献花は感動した。「慰霊の念」は、間違いなく世界中誰でも持つが、圧巻だった。ここは岸田総理の勝利。ゼレンスキー大統領が一番動かされた展示物は、銀行前階段に残る「人影の石」。あっという間に熱線で人間が黒い染みのような影だけ残して消えた。他の兵器ではまずあり得ない。筆者も同じような感情を持った。

ここでも重要なこと。ゼレンスキー大統領のコメントから感じたこと。彼は原爆のことは分かっていたし、近い将来、原発への攻撃、プーチンによる小型核使用もあり得るが、現時点では、ヒロシマの原爆と通常兵器使用によるウクライナ国内の被害を重ね合わせた。つまり彼にとって「原爆だから・・」という考えは、希薄だったように思えた。

⑱昔、アゴラに書いた。河野前統合幕僚長の発言だ。

「核抑止に関する協議には自分は参画したことはありません。ただやっているとは思います。(でも河野さんトップだったのですね?)私は軍人です。(米側とは)軍人同士。核抑止は政治ですから。政治の了解があれば、我々は具体的に決めます。だが米軍と核の抑止に関して話したことは一切ありません」

現在の自衛隊幹部も、軍人として最低限のことはご存じだろうが、有事で米が在日米軍基地も関係する「核使用」を決断する時、自衛隊が迅速に動けないのは、ほぼ間違いないだろう。受け身だけで、なにもしないとしたら、そんな時代は終わったと申し上げたい。

さらに、佐藤行雄・元国連大使は、2017年に著した「差し掛けられた傘」で、「核戦略問題にほとんど口出ししなかった日本が、具体的な提案をすれば、米国は今後、日本をもっと真剣に扱うようになると思った」と回想する。

筆者も過去40年くらい、日米関係、米軍による日本への「核の持ち込み」事実を、直接取材してきた。

多くの米側関係者が、日本人には核はタブー。有事のことなど殆ど考えていないし、ましてや核の運用などオフレコでもまず話せないと言う。

もういい加減、廃絶の夢だけみて、現実と全く違う観念論だけの状態を終わらせる時期が来た。向こう2年くらいまではほぼゼロだが、それ以降、1割くらいの可能性で台湾有事があり得るのだから。

原爆は絶対悪ではなく「必要悪」というのが世界の常識。現実を直視して動くべきだ。「反論」「反証」を激しく期待する。