⑦ 抑止力、自国防衛に使える大量殺戮兵器は3つ。米はそのうち2つ「生物」「化学」を放棄。「核」だけに依存する。
(現時点ではこの3つに代わる兵器は、存在しない。筆者は世界最大といわれた大規模爆風爆弾MOAB を直接取材した。アフガンで実際に使われたからだ。一方のロシアはその4倍の威力という FOABを開発したという。報道だけで、詳細の確認が取れていないが、かなりのものと聞いた。いずれにしても、この両者とも核の威力には及ばないのは間違いない)
露中はいまだに3つとも継続保有するので、米の核放棄は、日本の防衛もあり、絶対にない。
⑧ 他国が攻める大きな理由がなかったなど、要因の全てではないが、日本の平和は基本的に米の「核の傘」で守られている。だから過去70年くらい米国にお願いしている。基地問題も地位協定問題も、反米に傾く日本の世論を日本政府は基本的に抑えて来た。その一方で米国が廃絶に向けて動こうとした時、なにが起きたか、日本人は直視するべきだ。
例えばオバマ政権が核拡散を抑えようとやろうとしたこと。「先制不使用」宣言など、日本政府が米国政府と議会に対して、反対した。理由は「日本防衛力が弱まるから」だった。つまりいつも日本国民が理想論、綺麗ごとで信じている核拡散防止(核廃絶)を支持するかのようにみえるが、実は日本政府の行動はそれに逆行した。悲惨・廃絶思考だけで、思考停止の日本人の多くが知らないだけだ。
海外大手メデイアが報じているのに、つい最近のNHKスペシャルを除いて、日本のメデイアは殆ど報道しない。政権への忖度か。いずれにしても日本人が核問題を議論する時、大切なスタート地点として、このような「真実」を知るべきだ。
⑨ 筆者の父は陸軍将校で、ヒロシマ爆心地3キロで被ばくした。数え切れないくらいの重症者を看取り、死体を焼いた。殆どが「お水を一口」と言って逝ったという。人類史上最悪の「阿鼻叫喚」を体験し、その後父も白血病で死んだ。だが「原爆がなければ、日本は降伏せず”本土決戦” ”一億玉砕” で、間違いなく自分は死んでいた」と、原爆に一定の評価を与えた。
⑩ 原爆投下が必要だったか?否か?まずは米国の「投下理由」。よく言われて来た「日本を降伏させるため」。もう20年くらいになるか、一時期は米側の発表だが、「100万もの米将兵を救うため」が主流だった。これは当然ながら、数が誇張し過ぎだとして、日本側に攻撃された。筆者は当事者にも直接取材した。100万は確かに根拠がなく、大袈裟で不正確だ。たまにある米国人の大袈裟な表現だ。最悪のミスの1つである。
しかし、ポツダム宣言を受諾しなければ、米兵数千くらいだけでなく、日本軍兵士、東京大空襲でも、分かるように、一般市民も数万人が死んでいた可能性がある。原爆とソ連の裏切り侵攻がなければ半年くらいは戦争が続いていた可能性が高い。その間、どれだけの日本の民間人が、毎日毎日死んでいたか。
筆者はネヴァダ州に残っている日本式木造家屋の立ち入り取材もした。これも複数回対談したロバート・マクナマラ元国防長官が、戦意を失わせ、降伏に導くために、実験用に実際に建築された木造家屋がどのようにしたら、火が回り易く、婦女子も含めて焼き払えるかを計算。戦後、日本政府から日米関係に寄与したとして最高の勲章をもらったルメイ将軍が、B29から焼夷弾を投下、日本各地の民間人の無差別殺りくを繰り返した。さらに米軍は本土決戦で、さらなる無差別殺りくにつながる毒ガス使用なども考慮していた。
「日本を降伏させるため」論が大きく変わったのが、20数年くらい前だ。1965年から同じような主張をしていたが、殆ど無視、脚光を浴びたのが90年代。ガー(アルペロヴィッツ博士Alperovitz)の「降伏に原爆は不要だった」という論が、米国研究者の多くが認めることになる。ガー博士は世界で一番米公文書を読んでいると言われ、筆者はワシントンの彼の自宅で4時間以上対談した。
ガー博士の主張は、米側の投下理由の一番は「ソ連への威嚇」。過去30年前くらいまで一番の理由と信じられていた「降伏させるため」は、実は2番めの理由だ。そして、「予算使い過ぎへの説明」「人種差別」「真珠湾への報復」「(ナガサキは)初めてのプルト二ウム原爆が爆発するかの実験」「放射能攻撃に関する人体実験」などなど小さな要因が多数ある。
だが、米側の投下理由より重要。一番大切な「第二次大戦が終わった」と同義の日本が「なぜどのようにポツダム宣言を受諾したのか?」つまり「日本が無条件降伏した」最大の理由は、まずは「ヒロシマ」そしてダメ押し「ソ連の裏切り侵攻」だ。ナガサキは不要だった。日本以外の世界の識者と話すと確認できる史実だ。
御前会議で降伏・抗戦半々だったが、最後は天皇のご裁断で決まる。8月10日と14日の会議だった。8月15日天皇から国民に降伏が知らされた。一番大きな理由は「原爆投下」だった。日本以外の世界の常識だ。
⑪ 日本人学者の1人は米国を以下のように批判する。トルーマン(黒幕バーンズ国務長官=投下に超積極的)は、「ソ連への威嚇」にどうしても使用したかった。日本が降伏すれば当然使えない。だから日本に降伏させたなくなかった。その結果、「天皇制存続の保障」を認めてやれば、降伏したのに、ポツダム宣言草稿から皇室容認条項を削除、日本に降伏させないようにした。削除と同時に投下許可を出し、その数日後にポツダム宣言発出。つまり、投下を決めていた。だから米国は悪魔、謝罪しろという主張だ。
⑫ 違う。まず投下許可を既に出していても、日本が降伏決定すれば、当然ながら、すぐに投下中止できた。別にポツダム宣言発出前、最初に投下許可を出していても、全く問題ない。
さらに「天皇制存続の保障」条項。「もう二度と侵略をしないと世界が完全に納得すれば皇室護持を認める」という条件付きだ。
筆者はかなり直接取材したが、当時の米世論、連合国を知れば、世界の納得など「あり得ない」。だから議論はあったが、最終的な「削除」も当たり前。
捕虜虐待、カミカゼ、天皇利用の狂気の軍国主義などの理由、米など連合国は天皇をA級戦犯として扱うことができたし、そのつもりだった。日本にとっては最重要な皇室護持は、戦争している相手は受け入れられることではない。当然各種議論の前提ではない。普通に考えても1930年代からの日本の行動をみれば、最初から免責など与えない。日本の皇室存続はあくまでも日本側の希望。実際にそうなったが、そんな虫がよい自分勝手な希望は通らない。