① 露中北はますます核を増やす。英仏だけでなく米国もそれに備えて「増強」する方向性。少しは歴史を勉強すれば分かること。米を中心としたG5などは、基本方針でいえばだが、懸命に核軍縮に努力してきた。もちろん、日本の被ばく体験が元になっている。10発の核兵器でも相手を皆殺しできる。お互いに殲滅し合う。そうなら、100発は不要だろうという考えだ。その結果、米ソは核削減条約を結んだ。レーガン・ゴルバチョフに拍手だ。だが独裁者プーチンは今回一方的にその努力を無効にした。
さらに中国と北朝鮮は一方的に核を増強している。交渉も頓挫。核拡散防止条約もほぼ効果無し。もともと「自分らは核を持っていいが、お前らは持つな」という、誰が聞いても不平等な条約なので、なかなか巧くいかない。さらに日米などがどんな悪いこと、つまり彼らが脅威を感じるような刺激的なことをしたのか?なにもしていないと言える。そのため当然だが、中北の核などの軍備拡大に対抗するしかない。
韓国も北の脅威を受け、「自国で自国防衛」思想により、実現性はまずないが、独自核武装への支持が高まる。廃絶ではなく、拡散防止に必死になってきた米は、韓国の動きを抑えるのに必死だ。それもあり、日韓に「仲直りせよ」とかなりの圧力をかけ、その結果が出た。
②ウクライナに対するプーチンの侵略行為でも、いままでと基本的に核抑止に関する総論は不動だ。日本人ジャーナリスト柳澤秀夫氏は「米国がウクライナ戦争を煽っている」という「思い込み」を言っていたが、日本の国益を損なうとんでもない話だ。開戦後72時間とそれ以降からいままでの動きを詳細に見れば、それが事実でないことが理解できる。
同盟国ではないのに、ウクライナ人男女が血を流しつつ、必死で祖国を守っているのを知った。それに感動した米国(人)は、ウクライナ支援を実行中。しかし、露骨なウクライナ支援はプーチンを必要以上に刺激し、脅威と感じさせる。そうなると最後は、もともと通常兵器で劣るプーチンが核使用したくなる。だから最初から英米独仏勢力は、抑制的にウクライナ支援を継続している。そこでは明らかに核を怖がる抑止論が、機能している。
同時に米国など西側を刺激すると、まずあり得ない極論だが、西側による核使用につながる可能性があった。にも関わらずにプーチンがウクライナに侵攻したのは、核抑止が破綻したという論もある。本来は核兵器の存在が戦争回避になるはずだが実際に戦争が起きた、だから破綻したという論だ。しかし議論は必要だが、上記よりは説得力は弱いと思われる。
③ 今回のウクライナ戦争が始まる前に、「安全保障は保証する」という米英露の約束、ブタペスト合意があり、ウクライナやカザフスタンなどは核を手放した。だが約束は破られた。ウクライナや同じ当事国のカザフスタンやベラルーシに限らず世界中(日本も?)が、「核がないと侵略される」と思い込み、核拡散が広がる。だがウクライナ勝利なら、日本人が思い込んでいるほど世界に伝わっていないヒロシマ被ばく実相よりも、効果的に核拡散防止が実現する。だから日本はより積極的にウクライナ支援をするべきだ。
④ 5大保有国以外でも、特に北朝鮮、そして長年の天敵同志のインドとパキスタン(インドは対中国対策も)さらにイランがもうすぐ核を完成することもあり、イスラエルは絶対に放棄しない。国の存亡がかかっているため確実だ。米国も同じ。敵国が放棄しないのに、誰が自分で最初に放棄して裸になりますか?まずは米国がお手本を示せという無知がいる。既に人を殺していまでも出刃包丁を振り回しているヤクザ相手に、誰が自分の防衛策を放棄、無防備になりますか?自分は関係ない、人ごともいい加減にしてと言いたい。
日本人の多くは「9条」や「戦争しない国宣言」で、核はもちろん誰からも攻撃など受けないと思い込む。実際、他にも理由があるが、主要因は米国の核の傘に守られ誰からも攻撃を受けなかった。その結果70数年平和だった。だから自国防衛を真面目に考えていない。例えば日米軍事同盟が解消、米が核を放棄、その傘が無くなり、その結果なにが起き得るのか、全く考えない。日本が核ではなく、通常兵器でも焼野原になり、他国に占領されたら、誰が責任を取るのか? ノーベル賞に輝くサーローさんら、反核思想、廃絶だけを考えて、邁進する人々は、その責任が取れるのか?
⑤筆者は10ー20年くらい前に、ペリー、キッシンジャー、シュルツ, シュラシンジャー元国防長官、国務長官、安全保障特別補佐官、CIA担当者と長時間複数回対談した。シュラシンジャー、諜報官、補佐官らは反対意見だが、ペリー、キッシンジャー、シュルツ、ナン上院議員は「核廃絶」に旗を振っていた米実力者だ。
その時、筆者は「廃絶とか言ってもイスラエル、北朝鮮などなど、廃絶するとは思えないが、、」と責め立てた。みな「それでも諦めない」と言った。
しかしつい最近。ペリー元国防長官が言った。彼はブタペスト覚書でウクライナに核放棄させた功労者だ。
「”核なき世界”を話していた時、実現は難しいが可能なことであり、努力する価値があると思っていた。だが今日はその実現は不可能に思える。ウクラにおけるロシアの行動はその事を明確に示している。”核なき世界”について話していた時でさえ、その実現可能性が高かったわけではなく、どれだけ難しいかは認識していた」。
あれだけ頑張ると言っていたペリー長官がいまや「不可能に思える」と明言した。これが現実だ。
⑥核廃絶は技術的にも不可能。人類の歴史をみれば分かる。一回生まれた兵器などの技術は、それに勝るものが登場しない限り、無くならない。筆者はプルトニウム発明(発見)したグレン・シーボーグ博士を母校のUCバークレー校で、長時間対談した。その時、同博士は核兵器は「予想以上の非人道的な兵器だ。しかし、一回生まれたものを消し去ることはできない」と言った。造語の「発明を取り消す」という意味の de inventionという言葉を使ったのが印象的だった。

ハンス・ベーテ博士
他にも筆者はハンス・ベーテ博士(写真)など、マンハッタン計画で原爆を作った科学者5人くらいと直接対談した。
べ―テ博士はエド・テーラー博士を除く他の開発者と同じ。ヒロシマとナガサキの結果をみて「反核」に転じたが、核兵器の数はいまは多過ぎるが、数十くらいなら必要と筆者に明言した。
基本的に皆シーボーグ博士と同じ。
「廃絶は無理、まずあり得ないことだが、各国が万が一にでも廃絶を決めても、原爆製造技術情報は、既に世界に拡散しており、ネット利用でテロリストなどが個人で作れる」。つまり完全に無くすことは不可能と言った。
日本人の多くは知らない。筆者は40年くらいワシントンを取材している。30年くらい前から、米国は日本にプルトニウムがあること。それを利用して原爆製造に走ることを懸念、警戒してきた。無知だった筆者は日本人は核アレルギーなので、原爆製造はあり得ない。なんでそんな心配するのか?と思っていたし、そうも言った。飛んでもない。ここ15年くらいますます確信するようになった。日本もこれから原爆製造国になる可能性がある。安全保障のプロ、米国は常にいろいろ考えている。自分も含めたトンボ日本人とは全く違う。
製造技術そのものはそんなに難しくない。だが、ウラン濃縮やプルトニウム入手は非常に難しい。日本に既にあるプルト利用で、原爆製造に走ることは十分可能。1年かからないでできるだろうと、米専門家から聞いた。いまこの瞬間も米側専門家は、常に日本のプルトを監視している。