ベラルーシへの低出力核(戦術と戦略がますます重なるケースが多くなり、戦術核という言葉は死語になり、これから使用されない可能性が高い)の配置は、ほぼ完了した。ロシア・ベラルーシ連合に参加する国には、全て核兵器が与えられるという論も出ている。「核拡散防止」と「核軍縮」など夢で、廃絶に至っては「絶対にあり得ない」状況になっている。
現在、ウクライナの逆転攻勢が進行中であり、東部だけでなくクリミアもウクライナ軍に奪還される可能性がある。もし限界まで追い詰められるとすれば、プーチンは自分で勝手に併合した”祖国”の存亡の危機に直面し、核兵器使用がますます高まる。
筆者は欧州の米軍基地で秘密裡に取材を重ねる。表面だけでなく、水面下でも英米は諜報支援を実施する。さらに半年くらい前に米国がプーチンに対して、もし核を使うなら米軍とNATOは通常兵器使用で、報復すると警告した。ウクラ領内のプーチン軍と黒海艦隊を殲滅。さらにプーチン個人の暗殺も辞さないという内容だ。プーチンは怖いはずだ。これが「ヒロシマ体験」よりも、プーチンに対して効果的な「抑止」になっている。これが現実なのだ。間違いない。
G7ヒロシマ首脳会議が先日終了した。この場所は人類が最初に(そして最後になることを願う)原爆被害を受けた場所であるため、核軍縮と核抑止に関する議論が重要となった。日本人が多く望む「核廃絶」の話も被ばく者などから強く出たが、後述する理由で、大きなテーマにはならなかった。
サーローさんと彼女の仲間の気持ちは理解できる。彼(女)らの努力と信念には敬意を表す。しかし、彼(女)らは世界の現実を把握していない。例えば、「お祭り騒ぎだけ」という言葉は適切ではない。またウクライナとインドの握手の意味が理解されていない。大きな結果を期待することはできなかったとしても、象徴的な意味にも配慮すべき。もし彼(女)らの主張が有効であるならば、核兵器は既にほとんど地球上に存在しなくなっているはずだ。

ShantiHesse/iStock
原爆資料館で実際の被ばくの実相を目にし、核兵器の使用にためらいを抱くことを期待するのは、G7よりもむしろプーチンや習近平、そして金正恩だ。サーローさんらはこの3人に原爆の実態をみせて、核使用自粛を直接言うべきだ。G7に言う方が簡単で、メディアも報じてくれるからだろうか。
残念ながら世界の核の「現実」は、以下の通りだ。