弊害は地味な事業分野の資金調達難に現れる
その弊害がどこに現われるかというと、まず中小零細企業が乱立する地場産業への細々とした中小銀行からの資金供給がますますやせ細ることです。
このブログでも何回かご紹介しましたが、1947年にロビイング規制法という名の贈収賄奨励法が制定されてからのアメリカ経済は、いびつな発展を続けてきました。
この法律が制定された時点ですでに3~7社ぐらいの全国的な寡占企業が成立していた業界は、ワイロの力で有力企業に有利な法律や制度をつくらせて繁栄を続けます。また、まだ存在しなかった分野を開拓した新興企業も、その分野を独占状態で維持できます。
ところが、その時点ですでに産業としては成立していたけれども寡占状態を確立していなかった産業は十分なロビイング投資ができないので、中小零細企業乱立のまま取り残されることになります。
不動産や建設がそうした産業の典型でして、アメリカには開発・賃貸・分譲を手がける総合不動産企業も、土木・建築なんでもござれのゼネコンという業態も、もののみごとに存在しません。
こういう巨額資金を大きな利幅で運用できないような業界にどこが融資するかというと、中小銀行なのです。
ご覧のとおり、「最大の原材料は借金」と呼ばれる商業用不動産開発事業などは、中小銀行からの融資がなければにっちもさっちも行かない状態なのです。その他不動産も55%と過半数を中小銀行が占め、居住用不動産でも11年間でシェアが22%から38%に上がりました。
このまま大手銀行の冒険的な方針のしわ寄せで中小銀行の融資能力がどんどんやせ細ったら不動産業界全体に危機が訪れます。
「インターネットの普及で、仕事は在宅勤務でOK、買いものもeコマースで十分という世の中になったから、不動産という業界自体も不要になる」といったご意見もあるようですが、まあそこまで実情を無視した議論にお付き合いする必要もないでしょう。
もちろん、被害は不動産業界にとどまるわけではありません。米国独立企業連盟という産業横断的な中小企業の連合体が中小企業楽観度指数というデータを公表しています。下のグラフと表の組み合わせに出ていますが、状況はかなり悲観的です。
ご注目いただきたいのは、楽観度指数の基準点となる100が1986年の実績として設定されていることです。当時、アメリカ経済は日本経済の追い上げにあって四苦八苦していて、景況感はかなり渋かった時期です。
中小企業の楽観度は、その1986年実績である100に対して90台とか80台後半にとどまっていることが多いのです。
中でも「アメリカ経済全体が良くなるか、悪くなるか」という質問に対しては、楽観派マイナス悲観派がマイナス47パーセンテージポイントで、しかもこの極端な数字が前月から2ヵ月連続しているのです。