「がんばらない自分には価値がない」と感じていた筆者
多くの人ががんばってしまう理由。それはウィル同様、不安・感情を感じたくないからだと筆者は考えている。少なくとも長時間労働していた頃の筆者はそうだった。
たくさん仕事が残っていると不安だった。犠牲心を示さないと上司や同僚から認めてもらえないと不安だった。当時自覚はなかったが、不安を解消するために毎日朝早くから夜遅くまでがんばって働いていた。当時は「がんばらない自分には価値がない」と思いこんでいた。
がんばっていれば不安と「自分には価値がない」という感情を感じずにすんだのだ。
今からふりかえると当時は仕事の生産性も低かった。毎朝始業前の1時間半、いわゆる前業をしていた。しかしある時期からブログを毎日書くために前業をやめる決断をした。
仕事が回らなくなったらどうしようと不安になった。しかし蓋を開けてみれば何ら支障は生じなかった。少なくとも月あたり20時間は労働時間が減っていた。毎日朝早くからがんばって働いていたのは一体なんだったのだろうと感じたのを覚えている。
それ以降、筆者はがんばって働くより、働く時間に制限を設けて一定のペースで働き続けるほうがはるかに効率的に働けると考えるようになった。その後残業ゼロの働き方を達成し、このことを確信するようになった。
「がんばる」を手放してみるどうすればリラックスしながらもっと効率良く働けるのか。
その鍵は少しずつ「がんばる」をやめてみて、小さい成功体験を積み重ねていくことだと筆者は考えている。
たとえば今まで1時間かかっていた仕事があるとする。試しにリラックスして取り組んでみて、時間を計測してみるのだ。試してみるとデレクのように2分程度しか違いがないかもしれない。一度でもそうした経験を積めば、その他の仕事もリラックスして取り組もうと思えるはずだ。
あるいは今、毎日20時まで働いているとする。ひとまず1週間、毎日19時30分に帰ってみる。1週間試してみて支障がなければもう1週間続けてみる。次は19時に1週間帰ってみる。小さい実験を続けて成功体験を積み重ねていくことが大切だ。
勇気を出して、がんばることを手放してみよう。他人の承認を得るためにがんばり続けたウィルが至った結論も手放すことだった。
習慣となっている「がんばる」をやめるのは、もちろん簡単ではない。筆者も気づけば肩に力が入ってしまっていることが多々ある。その度にデレクのエピソードを思い出すようにしている。
リラックスして取り組んでも、成果はそう変わらないかもしれない。毎日がむしゃらに働くより、たとえば8時間と決めてペースを守って働くほうが効率がいいかもしれない。
そんな新しい視点で今日から仕事に取り組んでみてほしい。新しい気づきがきっとあるはずだ。
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滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
長時間労働で悩んでいた頃の僕がどうしても知りたかった、仕事を断る具体的な方法 会社員だからこそ、自分が取り組む仕事を「選ぶ」という姿勢が大切–仕事がデキる人が当たり前にやっている「時間を作り出す必須スキル」 どんなに仕事を効率化しても働く時間が減らない理由(滝川 徹 時短コンサルタント) 「なるはや病」が蔓延する職場で、締め切りを見誤らない人がやっている交渉術。(滝川 徹 時短コンサルタント) 「時間がない。やりたいことができない」の本質的な問題とその解決策(滝川 徹 時短コンサルタント)
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年4月6日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。