ウィルにとって、スコティの言っている意味はよくわからなかった。ひとまずボートに戻りソファに座って30分ほど目を閉じた。携帯の電波は圏外。陸地から離れていてどこに行くこともできない。次第にウィルは貴重な時間を無駄にされているように感じイラつきはじめていた。
デッキに戻るとスコティ達はまだ水の中で談笑していた。ウィルはイラだちながら頻繁に携帯で時間をチェックし、同じ場所を行ったりきたりしていた。
自分の様子がおかしいと気づいたのはその時だった。まるで麻薬常習者の禁断症状のようだと思った。ジッとしていられなかったのだ。いますぐ何かやることを見つけないと頭がおかしくなりそうだった。
自分は依存症なのだろうか?と頭によぎったのはその時だった。麻薬や酒にではない。他人からの承認、成功、仕事にだ。なぜ自分が常に何かしていないと落ち着かないのか、ウィルは理解しはじめた。
幼い頃からウィルにとって空白・余白は敵であり災いをもたらすものだった。父親の仕事を手伝う時も、絶え間なく作業を続けていないとサボりとみなされた。高校の時の彼女には仕事が忙しくなり会えなくなると浮気された。
テレビ番組や映画を絶え間なく受け続けたのも、人々の心が自分から離れていくのが怖かったからだった。ウィルは常に忙しくすることで自分の不安・感情を感じないように今まで生きてきたことに気がついたのだった。