茅葺き屋根で鄙びた味
庭のすぐ向こうは海という場所に建てられたこの金沢別邸は、大きく分けて3つの棟で構成されていて雁行する廊下がこれを繋ぎます。東側には庭と海辺を望み、3つの棟は、北から南へ玄関のある台所棟、客間棟、居間棟と続きます。
海辺を背にして撮った上の写真では、右から左に台所棟、客間棟、居間棟が写っています。真ん中の客間棟が他の棟よりぐっと前に張り出したつくりになっているのがよくわかります。また、四方に傾斜する寄棟造の茅葺き屋根で、鄙びた味が静かな海辺によく似合います。
海辺の眺望を独り占め
客間棟の縁側には、雨戸の手前一面にガラス窓が建て込まれていて、座敷から海の眺望を独り占めにする心地がします。
窓ガラスの大半は建築当初から使われているものです。当時、日本ではまだ板ガラスが生産されておらず、ベルギーからの輸入品が用いられたと見られています。ちなみに、日本で最初に板ガラスが生産されたのは金沢別邸の落成から11年後のことでした。見学の際はぜひガラスを近くでご覧ください。少なからぬ気泡が混ざっていて、時代を感じさせてくれます。