年齢は、26歳から87歳に分布し、中央値は67歳である。男性が35例、女性が31例である。使用製剤は、ファイザーが54例、モデルナが11例、ヤンセンが1例であった。51例について、ワクチン接種から発症までの潜伏期間が記載されているが、15例が10日以内、9例が20日以内、6例が30日以内と、全体の59%が30日以内であった。予後不良で、報告時点で32例が死亡しており、ワクチン接種から死亡までの日数は、28日から452日で、その中央値は160日であった。

図3 ワクチン有害事象報告制度(VAERS)に登録されたクロイツフェルト・ヤコブ病
髄液検査で、14-3-3蛋白やタウ蛋白の高値あるいはRT-QUIC法で異常型プリオン蛋白が検出された症例は14例あり、なかでも診断的価値が高いRT-QUIC法で異常型プリオン蛋白が検出された症例が5例見られた。しかし、詳細な病理所見が記載されている症例は見られなかった。
フランスからの報告さらにVAERSへの登録例を検討すると、臨床所見や検査所見からCJDと極めて類似した神経疾患が、偶発的とは言えない頻度で発生しているのは確かのようである。しかし、詳細な病理所見の報告がないのでCJDと確定診断することはできない。それ以上に、接種後の潜伏期間が極めて短いことは典型的なCJDと同じとは思えない。
この疑問を解くのにヒントとなる症例報告を紹介する。パーキンソン病の病歴がある76歳の男性であるが、コロナワクチンの接種後に不安の増大、社会からの引きこもりなどの行動や精神的変容がみられるようになった。さらにパーキンソン病の症状が悪化して運動障害もみられるようになった。3回目のワクチンを接種した3週後に、突然、倒れて入院、集中的治療が行われたが間もなく死亡した。
剖検が行われ、直接の死因として、誤嚥性肺炎が考えられたが、脳には多発性壊死性脳炎、心臓には軽度の心筋炎の所見が見られた。得られた組織について、抗スパイク蛋白と抗ヌクレオカプシド抗体を用いた免疫染色を行ったところ、脳の血管内皮細胞とグリア細胞、心臓の血管内皮細胞にスパイク蛋白の発現が見られた(図4)。ヌクレオカプシドの発現は見られなかった。