最近、フランスからコロナワクチン接種後に発症した26例のCJDが報告されたので、その概略を図1に示す。 26例のうち20例はフランス、3例は米国、イスラエル、ベルギー、スイスからが各1例である。トルコからの報告と同様に、ワクチン接種後中央値が11日と短期間に発症しており、予後も極めて不良で1例を除いて全例が死亡した。

図1 コロナワクチン接種後に発症したクロイツフェルト・ヤコブ病の臨床経過

この論文についてファクトチェックが行われたが、この論文は偽りだと判定している。その理由として、1)コロナワクチンの接種が始まった2021年以降にCJDが増加したという証拠は見られない。2)人口の90%以上がコロナワクチンの接種歴があることから、CJDの発症は偶発的なものではないか。3)コロナワクチンがCJDの原因となる理論的根拠がないというものであった。

CJDのように極めて稀な病気では、発生率で統計的な有意差を示すのは困難である。ワクチンとの因果関係が認められている心筋炎・心膜炎でさえ発生率の差を見るのでなく、偶発性を検討している。すなわち、接種1日後〜21日後の心筋炎・心膜炎の発症リスクと接種22日後〜42日後の発症リスクを比較して、発症リスクに有意差があることから因果関係が認められている。3)については、スパイク蛋白にプリオン領域が存在することから、原因となる理論的根拠がないとは言い切れない。

図2には、ワクチン接種日からCJD発症までの日数を示す。ワクチン接種から30日後に発症した2例を除いて、24例は3週間以内に発症しており、この発症パターンは偶発的とは思えない。

しかし、26例については、CJDの確定診断に必要な髄液の検査や病理検査の結果は示されておらず、CJDと確定診断するのは困難である。また、ワクチン接種から発症までの潜伏期間の中央値が11日というのは、典型的なCJDと比較するといかにも早すぎる。

図2 コロナワクチン接種からクロイツフェルト・ヤコブ病が発症するまでの日数

次に、米国のワクチン有害事象報告制度(VAERS)に登録されたコロナワクチン接種後に発症したCJD症例について検討した。2023年3月17日の時点で、VAERSには79例の登録があったが、記載が不十分な症例を除いた66例の概略を述べる(図3)。