■ アメリカでは「AIのみで作られたもの」には著作権を認めず

アメリカでは2023年3月16日付の官報で、アメリカ合衆国著作権局(USCO)から「AIにより生成された要素を含む作品について」の著作権登録に関するガイダンスが示されました。アメリカでは著作権を行使するためには、その著作物を著作権局に登録する仕組みとなっています。

このガイダンスによると、AIによって自動的に生成されたものについては「原則として著作物とは認められない」としています。しかし、生成されたものに対し、人間による修正などが施された場合は「著作物」として登録するとの基準が示されました。

・出典:Copyright Registration Guidance:Works Containing Material

AI自動生成のイラストは「著作物」?著作権はどこに帰属するのか
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

最初の例として、ガイダンスには2023年2月に事務局が行った「人間が作成したテキストとAIサービス『MidJourney』によって生成されたイラストを組み合わせたビジュアルノベル」における登録審査の様子が紹介されています。審査結果は「全体では著作権のある作品を構成するが、個々の画像自体は著作権で保護できない」というものでした。

審査されたビジュアルノベルは、Kristina Kashtanovaさんの「Zarya Of The Dawn」。著作権局からは2023年2月21日付の回答書が、代理人のVan Lindbergさんに宛てて送付されています。

・出典:アメリカ合衆国著作権局 「Zarya Of The Dawn」登録についての回答書

AI自動生成のイラストは「著作物」?著作権はどこに帰属するのか
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

アメリカ合衆国著作権局では、AIが介在した著作物について特設ページを開設。2020年冬にさかのぼるこれまでの動きと、今後開催される公聴会などについてを一括して見られるようになっています。

・出典:アメリカ合衆国著作権局 「著作権とAI」特設ページ

AI自動生成のイラストは「著作物」?著作権はどこに帰属するのか
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

■ 日本の著作権法では?

日本ではどうなっているのでしょうか。根拠法である著作権法第2条には、著作物の定義として「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と規定されています。

・出典:e-GOV法令検索 著作権法

現在のところAIには「思想又は感情」が存在しないので、AIが自動生成したイラストなどは著作権が保護される「著作物」とはいえないのかもしれません。しかし、ここに人間の「思想又は感情」に基づく修正が加えられた場合は、議論の余地がありそうです。

この問題については、まだ日本で訴訟が起きておらず、確定した法律判断が存在しません。その前に法改正が行われて「AIが介在した作品」についての位置付けがなされるかもしれず、今後の動きが気になるところです。

<出典・引用>
GitHubコパイロット訴訟 原告団公式サイト
世界知的所有権機関 WIPO MAGAZINE 「Artificial intelligence and copyright」
アメリカ合衆国著作権局 Copyright Registration Guidance:Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence
アメリカ合衆国著作権局 「Zarya Of The Dawn」登録についての回答書(PDF)
アメリカ合衆国著作権局 「著作権とAI」特設ページ
e-GOV法令検索 著作権法
画像生成AI「Stable Diffusion」
※見出し画像は、画像生成AI「Stable Diffusion」で生成したイラストのスクリーンショット。その他本文中にある画像は、各出典ページのスクリーンショットです。

(咲村珠樹)

提供元・おたくま経済新聞

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