絵心のない人でも自分のイメージを具現化できる「画像生成AIによるイラスト自動生成」。国内外でさまざまなサービスが提供されていますが、生成過程や生成されたイラストをめぐり、著作権の問題も起きています。
画像生成AIによるイラストは「著作物」として認められるのか、また著作権は誰に帰属するのか、考えていきたいと思います。
■ AI自動生成イラストに関する著作権の問題
画像生成AIは、ネットを通じてさまざまな画像データを参照し、ディープラーニングの手法で傾向を分析。そしてリクエストに沿った形で要素を組み合わせ、整合させてイラスト画像を生成します。
ここで著作権まわりの問題となるのは、大きく分けて2つ。画像データを収集する際に、元データ(イラストや写真)の著作権を侵害してしまう「トレパク」に対するものと、生成されたイラストは「著作物」なのか、その「著作者」は誰かという問題です。
Aiによる「トレパク」疑惑については、アメリカでマイクロソフト、GitHub、OpenAIを相手取った集団訴訟が2022年10月17日に提訴され、裁判が始まっています。
・出典:GitHubコパイロット訴訟 原告団公式サイト
また日本国内のサービスである「mimic」が、2022年8月29日のリリース直後から炎上し、わずか1日でサービスをいったん停止したことも記憶に新しいところ。
mimicの方は2023年3月現在、事前審査を経てクリエーターとして認定された人のみが利用可能なサービスへと生まれ変わりました。AIが学習するのは登録者本人の作品のみとし、生成されるのは自分の作風を反映させたものとなっているほか、学習に使用したイラストを公開し、生成画像には透かしロゴが入るなど、著作権保護に配慮した仕様となっています。
■ 国連の専門機関では早くから問題に着目
全世界的な知的財産権の保護を目的として設立された国連の専門機関、世界知的所有権機関(WIPO)では、これらの問題を早い時点から認識していました。機関誌「WIPO MAGAZINE」の2017年第5号(10月に公開)には、AIと著作権の問題に言及した「Artificial intelligence and copyright(人工知能と著作権)」という記事が掲載されています。
・出典:WIPO MAGAZINE
この記事では、加盟各国の著作権法が、基本的に人間が著作物を作ることを前提に作られていることを紹介。AIによって自動的に生成されたものは作者が「人間でない」ため、著作物とみなされない可能性があること、またAIのシステム自体は人間が作っているので、システム自体は著作物として保護されるとの見方が示されています。