Indeed Japan株式会社のHiring Lab エコノミストの青木雄介です。
2023年4月より従業員が1,000人を超える企業が男性労働者の育児休業などの取得状況を年1回公表することが義務付けられます。
既に厚生労働省サイトなどで公表している企業もあり、今後は人材獲得の競争において企業が働きやすさをさらにアピールしていくことが考えられます。
このような世の中の動きの中で、求人検索エンジンIndeed上の求人情報において採用企業側が育休をどの程度アピールしているか分析しました。また、地域別の分析や男性就業者が多い職種ではどうかなども分析しました。
主要ポイント
●求人情報内で育休に言及することが一般的になってきています。企業が掲載した求人のうち育休に言及する割合は、正社員(無期)求人では、2021年まで伸びその後は安定的に推移し2023年1月は34.8%、正社員以外(有期)求人では、2021年から伸び2023年1月は10.2%です。人材獲得競争の中で、日本の採用企業側が育休をアピールしていることを示唆しています。
●育児休業法改正後の期間では、正社員(無期)求人・正社員以外(有期)求人ともに沖縄県で育休言及率が最も高い結果となりました。
●求人情報において育休が言及される割合は、女性就業者が多い職種で高くなっています。一方、情報システムなど男性就業者が多い一部の職種では、言及率が前年より増加しているものの、男性就業者が多い職種の大部分では大きく変化していません。
日本の育休の仕組み
まず、日本の育休の仕組みについておさらいしてみましょう。日本には、国が支給する「育児休業」制度(以降、「育児休業」と呼ぶ。)と、会社によって定められている「育児目的休暇」制度(以降、「育児休暇」と呼ぶ。)の2つの制度があります。
●育児休業
○原則、子どもが1歳になる前の会社員が、育児を目的とした休みを取れる制度
○法律に規定された権利なので、会社に制度があるかどうかに関わらず、一定の条件を満たしている会社員なら男女ともに取得可能。
○取得可能期間は、男性の場合は子どもが生まれてから、女性の場合は産後休業を終えてから、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までのうち、希望する期間。
○給付金は原則、休業開始時賃金日額x支給日数x67%、6か月以降は50%
●育児休暇
○会社の規定に定めがなければ、利用できない。
○分割して取得可能な制度。
○有給、無給は会社の定めによる。
○有期契約労働者も対象とする必要がある。
(出所:介護・育児休業法2017年改正)
「育児休暇」は、育児・介護休業法改正(2017年10月施行)によって、小学校就学前の子どもをもつ会社員が、育児目的で利用できる休暇を設けることが、事業主の努力義務とされました。さらに同法の改正によって、2022年10月以降から「産後パパ育休」の設定など、育児休業での適用範囲が拡大しています。加えて、2023年4月から、従業員が1,000人を超える企業では、男性労働者の育児休業取得率の公表が必要となります。
本分析では、求人に育児休業・育児休暇いずれかを意味するフレーズを含むものを「育休に言及している求人」として分析対象としています。これらをあえて区別せず分析する理由がいくつかあります。
1つ目は、検索上の技術的な問題であり、文字として区別したとしても、求人を出す採用側が明確に区別して文言を記載しているかを判断することが困難であることです。育休という短縮形がよく使われていることも、さらに識別を難しくしています。
2つ目は、採用側が育児休業、育児休暇のどちらの意味で使っている場合でも、「企業が育休に対する受け入れ体制をアピールしているか」という今回の分析目的に合致することです。
仮に育児休業の意味で使っている場合、国によって定められているため、企業が求人に記載する必要性の有無についての議論はあります。
その一方で、未だ育児休業取得率が高くない状況(2021年度時点の育休取得率は女性85.1%、男性13.97%、有期労働契約者では女性68.2%、男性14.2%)においては、採用企業にとって受け入れ体制をアピールするための記載には意味があると考えられます。
また育児休暇の意味で使っている場合、育児休業よりは一般的に利用されていないがオプショナルに利用できるという意味で、これも企業にとって育休の受け入れ体制をアピールすることとなります。
(出所:令和3年度雇用均等基本調査 結果概要)
次に、育休が求人に言及されている程度や地域・職種によるトレンドの違いに着目します。