こんにちは。
3月10日にシリコンバレーバンクが破綻してから、おなじくアメリカのシグネチャーバンクも破綻し、アメリカ中で中堅以下の規模のさまざまな銀行について経営不安を指摘するニュースが相次いでいます。
大西洋を隔てたヨーロッパでは、スイスで2番目に大きく、グローバルなシステム上重要な銀行にも数えられていたクレディ・スイスが、同業者による救済合併と国有化の悪いとこどりをしたようなスキームでUBSに吸収されました。
欧米銀行業界の波乱はまだこんなもので収まるはずはなく、経済の神経とも血液ともたとえられる金融が機能不全を起こせば、当然経済全体に大きな影響を及ぼします。
そこで今日は、今回の銀行危機の意味と、その解決がどんなふうに世界を変えるだろうかという点を論じたいと思います。

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まず、ご注目いただきたいグラフがあります。
2007~09年の国際金融危機当時、「アメリカ中の有力都市銀行、証券会社が軒並み破綻するかもしれない」と言われていた頃のアメリカ銀行業界全体の証券投資による含み損は、ピークで750億ドル(約9兆7500億円)弱でした。
それに比べて、直近の銀行業界全体の証券投資による含み損は10倍に近い7000億ドル(約90兆円)前後に膨らんでいます。アメリカのGDP23兆3000億ドルを全額損失の穴埋めに充てたとしても、損失一掃には4年近くかかる計算になります。
国際金融危機では、見せしめ的にリーマン・ブラザーズが破綻させられ、ベア・スターンズが破格の安値でJPモルガンに買収された以外には、銀行・証券業界大手はほとんど政府の資金で救済されました。
AIGという大手保険会社は、客のカネで大バクチを打っていたし、保険会社の倒産はあまり大きな影響を金融市場全体には及ぼさないのですが、それでも「大きすぎて潰せない」という非論理的な理由で救済されました。