リアルタイムの詳細データが行政の予算配分をより効果的・効率的に

松居:産業や観光の振興を考えるのであれば、消費を活性化する、経済を活性化するという文脈でなんらかのかたちでデジタルを使う必要があります。そうした時に、決済や行動データなどを取れることと、地域経済を直接的に、適切に刺激できることは非常に大事だろうなと考えています。

——ポケットチェンジさんのサービスだと、マスに向けてというより、地域住民など特定の方に対して目的をもって、色のついた経済圏を創造するためによりフィットした施策を打ち、効果検証できるということですね。

松居:自治体の様々な予算には目的や使途が明確にあります。観光予算は、地域の観光産業の活性化のために役立っていないといけませんし、子育てのための予算ならば、当然子育てをする人へ貢献するものになっていなければなりません。

しかし、目的をもって組成された予算が具体的に人々の行動にどう影響しているのか、厳密にはどれくらいの効果があったのかは測ることが非常に難しい状況でした。

自治体の予算配分をより効果的・効率的に、効果検証をより厳密に。その観点でも、我々のサービスがお手伝いできることがあると思っています。

——先ほど出てきた渋谷区のハチペイの事例ですと、目的によって使える方を限定することは行われていたのですか?

松居:はい。ハチペイという大きな経済圏の中で、渋谷区内の店舗・施設であれば誰でも使える経済圏、マイナンバーカード認証によって渋谷区民であると確かめられた方のみ使える経済圏、渋谷区へふるさと納税を行った方のみが使える経済圏など、いくつかの色分けされた地域通貨が存在しています。

——今のお話ですと渋谷区という経済圏の中で地域通貨が使えるお店があり、その中でも対象者によってもらえるバリューが変わって、さらにそのバリューが使えるお店というのも制御できるかたちになっていると。

松居:その通りですが、渋谷区内にはペイが色々あっても、お店側はそれぞれ通貨のインターフェース(決済端末・様式)を揃える必要はありません。

1つの店舗用の二次元バーコードやNFCタグで複数の異なる通貨を受け付けることができるようになっています。お店の負担は変わらずに、経済圏の数を柔軟にデザイン可能です。

お店側もユーザー側も混乱することなく、様々なデジタル通貨をシンプルに利用できるようにすることは大事だと思います。

また、ちょっとだけ残ったハチペイのポイントを別の経済圏でも使えるみたいになると便利ですよね。通貨間でバリューの交換や移転ができる方がユーザーにとっては利便性が上がりますので、複数のデジタル通貨間で残高を交換するようなこともできるようになっています。

——デジタルバリューを創り出す主体を増やすと同時に、通貨の乱立によって利用者の利便性が下がるようなことも回避できるよう設計されているんですね。