人口減少や高齢化が進み、行政の効率化が求められる中、今後日本でもますます普及するであろうデジタル地域通貨。全国各地の自治体で徐々に実験的な試みが始まっています。

東京都渋谷区の「ハチペイ」を始め、新潟県佐渡市の地域通貨「だっちゃコイン」、兵庫県朝来市の「あさごPay」、足立区商工会のデジタルプレミアム付商品券、有人国境離島で利用できる電子クーポン「島バウチャー」など、様々な地域通貨導入を行っているのが、ポケットチェンジ株式会社。

同社のサービス「pokepay(ポケペイ)」は、1店舗の小売店から全国展開のチェーン店、地方自治体まで、あらゆる組織が簡単にオリジナル電子マネー・ポイントを発行・管理できるプラットフォームです。

今回は、地域通貨について有数の実績をもつポケットチェンジ株式会社の代表取締役である松居健太氏に、一般社団法人官民共創未来コンソーシアムの官民共創データ利活用エバンジェリストである川崎浩充がお話を伺いました。

このインタビューは前後編の2回に分けてお届けします。この前編では、「デジタル地域通貨」について伺いました。(取材日:2023年1月26日)

オリジナル電子通貨発行で地域を活性化

——ポケットチェンジのサービス概要をお伺いしてもよろしいでしょうか?

松居:当社でご提供させていただいているサービスの1つに、「Pokepay(ポケペイ)」があります。地方自治体を含め、様々な事業者の方が簡単に自社のオリジナル電子マネー・ポイントを発行・管理できるプラットフォームです。

小売店・飲食店・商業施設・ビューティサロン・会員施設などのハウスマネー・ポイントや電子お買いもの券・電子回数券、自治体・DMOなどのデジタル地域通貨や地域電子ポイントなど、店舗や施設・コミュニティにおけるDX化、キャッシュレス化の実現、集客・顧客エンゲージメントの実現をサポートしています。

一言で言うと、自分の色のついたデジタルバリューを発行することで、独自の経済圏を構築することができるサービスです。

——地方自治体ではどのような使われ方をされているのでしょうか?

松居:地方自治体では、ここ2年ほど地方自治体のセクターないし、それに近い「商店街や地元で特定業界を盛り上げたい有志の集まり」「街おこしコミュニティ」の方などに広くご利用をいただいています。

地域通貨や、デジタルプレミアム商品券、特定の業界や商店街の中で使えるコミュニティ通貨だったり、様々なかたちでの実装事例があります。一定の事業期間を定めてキャンペーン的に発行する場合もあれば、地域通貨のように恒常的に発行・運用される場合もあります。

——自治体では、キャンペーンでの利用と恒常的な利用はどちらが多いんでしょうか?

松居:通年で恒常的な利用事例としては渋谷区の「ハチペイ」や佐渡市の「だっちゃコイン」がありますが、現時点では事業期間を定めた利用の方が多いかと思います。

とはいえ、プレミアム付地域商品券などの事業期間が定まったものを発行した後、その成功やノウハウを元に通年の施策を検討して動き出している自治体もいくつか出てきている印象です。あるいは、そういったキャンペーン的な施策を毎年行うというパターンも見られます。

——政府が補助金を出している点も大きいですよね。

松居:そうですね。自治体としては、せっかく補助金が出て地域のDX化なりキャッシュレス化を進められるきっかけをもらえたので、それを活用、構築したアセットを今後も上手く活用していこうという機運が生じているように見えます。

——登録された地域住民データなどの資産を次にも活用していこうという考え方があるということですね?

松居:その通りです。登録・利用ユーザーの資産もそうですし、地域通貨や商品券が利用できる加盟店の基盤や、事業・サービスの運用ノウハウも蓄積されているため、それらを再活用して、より大きな結果に繋げたい思いがあるようです。

また、デジタルだと集計が容易かつはっきりと数字が出るので、次回の施策に繋げやすいというのもありますね。