地域通貨のデジタル化によって見えてくるもの
——デジタルだと数字が見やすくなるとおっしゃっていましたが、どのような数字が見やすくなって、どんなふうに活用できるのでしょうか?
松居:紙の商品券の場合、どのお店でどれくらいの商品券が使われたかは商品券を回収した際にわかりますが、それ以上のことはわかりません。
これがデジタルになると、どのユーザーIDをもった人が、何月何日何時何分にどのお店でいくらの取引をしたのか、そのユーザーがどんな順番でどのお店を回ったのかといったことまでがリアルタイムにわかります。
——なるほど、使った方の人物像や辿ったルートが見えてくるわけですね。観光地の近隣300メートル圏内くらいで買い物を終える人が多いなとか、そういったこともわかりそうですね。
松居:そういう定性的にはなんとなくわかっていたことが可視化されます。スマホで回答できるアンケートを併用すれば、自己申告ベースですが、どこから来たか、何人のグループで来たか、どんな目的で来たかなどの情報も収集・蓄積することが可能です。
——毎回データを収集して、そこから得られる知見を利用して次の施策に繋げていくことができているんですね。
松居:デジタルだとキャンペーンの効果も計測しやすいので、次に活かすにはもってこいです。たとえば、全国旅行者支援のような、旅行者へのポイント支給の施策の場合、支給額によってユーザーの行動パターンが異なってくることがわかります。
——それは面白いですね。どう違うんでしょうか?
松居:あくまで一例ですが、5000ポイントを支給されると、その人が旅をする前にもともと使うと決めていた場所でポイントを消費することが多いようです。具体的には、宿泊費ですね。ポイントを宿泊費として使っておしまい。
付与額が3000ポイントだと宿代としてはちょっと足りないので、予定通り自分のお財布から払って、貰ったポイントは地域の飲食店やお土産屋さんに使う、といったような行動が起きていそうだということが見えてきました。
これを踏まえると、街中でより消費を促すにはどんなキャンペーンの設計をすれば良いか、どんなかたちでポイントを還元するのが良いのかといったことを考えることができます。
——すごい。毎回そういったことを可視化して、それに対して新たに仮説をもち、次の施策を実行することで、どう変わっていったのかみたいなことも捉えていけるわけですね。
松居:そうですね。観光客向けのポイントの話を例にお伝えしましたが、地域住民の方に向けた施策でも似たようなかたちでの示唆が得られます。