老後2,000万円問題やNISAの恒久化により、長期的な生活資金を準備する方法としての投資が注目を浴びている。真っ先に思い浮かぶ投資先は株式や債券だろうが、値上がりを期待して貴金属や高級腕時計も購入する人もいる。加えて、近年は手軽な投資対象として「ウイスキー」の人気も高まっている。

手軽に情報を収集できる

ウイスキー投資はインターネットやSNS、イベントで情報を収集し、オークションサイトや買取業者に売却すれば取引が完結するため、個人でも転売しやすい点が支持されている。

資産を増やそうとして投資に取り組むために大きなコストを支払えば、マイナスでのスタートになってしまう。例えば有料セミナーに10万円を支払うと、投資で10万円を儲けて初めてスタートラインに立てることになる。したがって、インターネットやSNSを使って無料で情報を集められるのは合理的といえる。

投資はコストを抑え、実際は高い価値があるものを安い価格で仕入れ、本来の価値に見合う価格で売ることで差額を得ることが大切だ。

その意味では、購入後に長く保管しておき、時間が経って希少価値が高まってから販売する方法や、都市部で価値が急騰しているにもかかわらず地方では安価で売られているものを仕入れて転売する方法などが考えられる。

ワインと比べて保管が容易

高額で取引される酒といえば、ワインが思い浮かぶ。ところが、ワインは温度や湿度、光、振動など、品質を維持したまま保管するには高額の設備が必要だ。こうしたコストを上回る利益を出す仕組みを整えることは、個人が副業としてやるには少々荷が重いだろう。

一方でウイスキーはワインよりもアルコール度数が高く、直射日光や気温差の激しい場所での保管を避けるという基本的なルールさえ守れば、長く保存しても品質は大きく変化しない。大がかりな設備も不要なので、個人が投資用として扱う商品として適しているといえそうだ。

投資対象になる銘柄は?

とはいえ、どんなウイスキーでも投資対象になるわけではない。スーパーマーケットやドラッグストアで安く売られている量産品は、値上がりを期待できない。

それでは、どんなウイスキーへの投資を検討すればよいのだろうか。始めやすいものとしては、近年人気が高まっている日本製の「ジャパニーズウイスキー」が挙げられる。日本を代表する飲料メーカーのサントリーでいえば、「山崎」や「響」などだ。

例えば「山崎55年」は、かつて香港で開かれたオークションに出品され、約8,000万円で落札されたことがある。華やかな香り、甘くて滑らかな舌触りが特徴で、ウイスキーに馴染みのない人でも、テレビCMなどで見聞きしたことはあるだろう。

同じサントリーの「響30年」も、メーカーの希望小売価格の2倍以上の価格で取引されることがある。響30年は年間数千本しか造られず、希少性が高いためだ。酒齢30年以上のモルト原酒を使い、すべて手作業で造られている。

これらを踏まえると、長い時間をかけて熟成されていたり、そもそも生産数量が少なかったりすることで、商品そのものの品質が高い上に希少性から価格が高くなる、という構図が浮かび上がる。

狙い目は小さなメーカー?

もっとも「希少性」という観点では、世界的に知られたサントリーよりも小さいメーカーのほうが、一度評価が定まると値上がりするケースが多い。

これは株式を含むさまざまな投資に当てはまる傾向で、あまり世に知られていないものが何かの拍子で高評価を受け、価格が急騰することがある。よほどの目利きでなければ無名時代から目を付けるのは難しいだろうが、話題になり始めた時点で早めに確保することは、努力次第でできそうだ。

例えば、埼玉県秩父市を拠点とする会社「ベンチャーウイスキー」は、日本で唯一のウイスキー専業メーカーで、創業は2004年。2005年に初代「イチローズモルト」を発売し、2年間で延べ2,000軒のバーを巡り、少しずつ口コミを広げたブランドだ。

その後国際コンテストで数々の賞を受賞し、54本セットが約9,750万円で売却されて話題になった。

利回りは8%?リスクもあり

英国でウイスキーへの投資を手がける「Whisky Invest Direct」によると、2006~2015年を対象に、シングルモルトウィスキーの製造直後の価格と8年間保管した場合の価格から年利回りを計算すると、14.3%となる。

これにインフレの影響などを勘案して数字を調整すると、実質的な利回りは年8.4%。一般的に、株式投資では配当利回りが3%を超えるあたりから「高配当」と呼ばれることを考えると、ウイスキー投資はかなり高利回りの運用方法に見える。

ただし、投資の世界では「利回りの高さ」が「リスクの大きさ」と比例することがある。ウイスキーが飲み物である以上、飲用の需要が下がれば価格もさほど上がらなくなるだろう。

また、時代によっては傾向が変わり、それまで人気だった銘柄の価格が下がる可能性もある。逆に無名メーカーの商品価格が急騰することもあるため、常に最新の情報を入手するようにしたい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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