セカンダリー取引の手段

それでは、セカンダリー取引の買い手、つまりセカンダリー取引にはどのような手段があるのかをご紹介していきます。

まず、従来の国内市場においても、ファンドのLP持ち分(※3)を別の投資家が買い取るケースや、ポートフォリオ整理の手段として未上場株をまとめて買い取る動きはありました。

しかし、順調に投資ラウンドが進んできた有望なスタートアップの未上場株を適切な価格で引き受けるプレーヤーは存在しておらず、既存の「まとめて買い取る」買い手だけでは金額的にも資金の流動化の受け皿として十分な規模とは言えませんでした。

(※3)LP持ち分:VCを通して出資する投資家の保有株式

そこで、有望なスタートアップ株式の適正価値でのセカンダリー譲受という未開拓の分野に切り込んだのが、「ケップルリクイディティファンド」です。

スタートアップへの投資残高が拡大しており、これまでのプレイヤーだけでは、VCや大企業が保有する株式の流動化には対応しきれません。

そのため、より規模の大きなトランザクションを行える「セカンダリーファンド」が担う役割は大きいと考え、昨年ケップルリクイディティファンドの設立に至りました。

最近では、さまざまな手法のセカンダリーファンドの立ち上げのニュースを目にする機会も多くなってきました。

例えば、フェムトグロース・ワン投資事業有限責任組合は、既存ファンドの期限を超えて投資先企業の成長を継続的に支援する仕組みとして設立されました。

また2つ目の手段として、「追加投資専用ファンド」の動きも増え始めています。「追加投資専用ファンド」とは、VCが既存投資先のスタートアップへ追加投資を行うファンドを指します。

海外では「オポチュニティ・ファンド」や「グロース・ファンド」などと呼ばれるこのファンドは、以前投資したスタートアップに対して、主に「レイターステージ」において投資することを前提としています。

まだ日本で事例は多くありませんが、最近ではインキュベイトファンドやグロービス・キャピタル・パートナーズ、Coral Capitalといった主要VCがこのような「追加投資専用ファンド」の立ち上げを発表しています。

最後に3つ目の手段として、日本ではまだ整備されていない「セカンダリーマーケット」です。欧米では、証券取引所で扱われない未上場株式の直接取引のためのマーケットプレイスが存在しています。

2022年11月に岸田内閣が発表した「スタートアップ育成5カ年計画」にも今後のセカンダリーマーケットの環境整備の必要性について記載されたものの、まだ議論が始まったばかりです。