FIRE(早期リタイヤ)へ憧れる人は多いが、ほとんどの人にとって完全なFIREは難しく、FIREを“卒業”して仕事を再開する人も多い。だが、投資をしながら好きな仕事をする「サイドFIRE」なら可能だ。この記事ではサイドFIRE実現のコツを紹介しよう。

FIREを実現する条件とは

「FIRE」とは「Financial Independence, Retire Early」の略で、経済的に自立して仕事を早期リタイアすることを意味する。

海外のスタートアップ企業では株式公開後に創業者が会社を売却して莫大な富を得て、30代のうちにFIREするような例もあり、それが日本でも報じられた結果、多くのビジネスパーソンがFIREへの憧れを持つことになった。

FIREを実現する条件として一般的に言われるのが、年収の25倍を貯めてそれを4%の利回りで運用するという考え方だ。たとえば、年収600万円の人なら25倍の1億5,000万円を貯める。そして、それを年4%で運用すれば、年収と同じ600万円の利益が出ることになる。

FIRE実現への2つのハードル

年収の25倍の元本が毎年、年収分を生み出す“打ち出の小槌”となるわけだが、これを実現するには大きく2つのハードルがある。

その第一は、年収の25倍を貯めるには、年収の半分を毎年貯めたとしても50年かかってしまうことだ。もちろん、すべてを現金の預貯金として貯める必要はなく、貯めながら運用してもいいのだが、その場合でもかなりの年数がかかるのは間違いない。元本を貯めているうちに、FIREどころか普通に定年退職でリタイアすることになるだろう。

第二のハードルは、平均4%での運用の難易度である。多くの投資商品が「年○%の運用も可能」とアピールするが、そこは楽観的に考えないほうがいい。平均4%の運用はかなり難易度が高いはずだ。

そうしたことから、先に挙げた海外でのFIRE例のように、自分が持つ会社を売却して大金を用意できるとか、実家にかなりの資産がありその譲渡や相続を受けるといった状況でもなければ、通常言われている意味でのFIREは難しいと言わざるを得ない。

最近では無理にFIREしてみたはいいものの、運用益の少なさからぎりぎりの節約生活を強いられ、元本の切り崩しを余儀なくされたあげく、生活のため会社員に逆戻りした人もいる。そうした人を“FIRE卒業”と揶揄するむきもあるようだが、いったんはFIREに至ったというだけでも、大変な努力をして貯蓄した人であるのは間違いない。

「サイドFIRE」のすすめ

完全に仕事からリタイアし資産運用だけで豊かな生活を維持する、従来の意味でのFIREを「ファットFIRE」と位置付け、一方で、資産運用で収入を補いつつ、時短勤務などで余暇にあてる時間を十分確保することを「サイドFIRE」ととらえる考え方もある。

サイドFIREは、以前よく言われていた「セミリタイア」に似た考え方であり、一般のビジネスパーソンにも十分可能とされている。

たとえば、年収600万円の人が毎年300万円を20年貯めた場合、6,000万円が貯まることになり、これをより現実的な年3%で運用したとすれば年180万円の利益となる。月あたりでは15万円なので、これだけで生活するのは現実的ではないが、給料とは別にもらえる不労所得として考えるとそれなりの額だ。

そこで、年収600万円の仕事から年収420万円の仕事に転職したとしても、運用益として年180万円が得られるなら、生活水準を落とす必要はないことになる。

こうした形でのサイドFIREにより、給料は安いが自分にとって真にやりがいのある仕事へ転職したり、時短勤務にして家族との時間や趣味の時間を確保したりできる。また、フリーランスの仕事に挑戦したり、十分な収入が期待できないという理由で諦めていた実家の事業を継承したりすることも可能になってくるだろう。

サイドFIREとは、資産運用を活用したこうしたスタイルの生き方を指しており、その最大のメリットは、楽しいことや、やりたいことをしながら適度に働きつづけるという点にある。これを、ワークライフバランスの再構築と考えることもできる。

そもそも人というものは、適度に働いていたほうが生活にハリがでるものだ。ファットFIREを実現した人の中には、楽しいことをひと通りやりつくすと生活にハリがなくなり、一気に老け込んでしまう人もいるようだが。サイドFIREにはそうした心配はない。

サイドFIREを実現するコツ

だが、サイドFIREを目指すにしても、投資運用の元本を貯めるのは大変な作業となる。やることは、収入を増やす一方で節約して出費を最低限にまで減らすことがまずひとつ。

収入を増やすというと副業を思い浮かべる人も多いと思うが、大企業や優良な中小企業に勤めているなら、本業に力を注いだほうが年収アップにつながるはずだ。

そして、いざというときの生活資金は残しつつ投資も行っていく。これは、本格的にサイドFIREを始める前の投資の勉強も兼ねることになる。このとき大切なのはハイリターンなやり方ではなくローリスクを優先すること。

そのように節約や投資を心がけつつ身に付けたマネーリテラシーは、サイドFIREに移行してからも役立ってくれるだろう。

また、FIREというと30代、40代で行うものという印象があるが、別に50代で行ってもよい。定年退職よりも少し早くセミリタイアすることで、気力のあるうちに新しい生き方を始めることができる。

なお、死ぬまで投資の元本を抱えておく必要はないので、シルバー層といえる年齢になってきたタイミングで元本を切り崩しはじめてもいいだろう。その場合、元本はそのまま老後資金となる。

たとえば、65歳まで6,000万円の元本を運用してサイドFIREを続け、その後は完全にリタイアする場合、その6,000万円がそのまま残りの人生の生活資金となる。いくつまで生きるかにもよるが、6,000万円もあればそれなりに余裕のある暮らしができるはずだ。

サイドFIRE開始後のリスクとは

サイドFIREを考える上で、ひとつ念頭に置いておかないといけないのが、今後インフレ化が進んで物価が上がっていった場合に、資産価値が実質的に目減りするという点だ。

働いていればインフレによる賃上げも期待できるが、サイドFIREの場合はインフレから受けるマイナスが大きい。サイドFIREに移行する前には、そうしたリスクも踏まえておく必要があるだろう。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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