帝国データバンクの倒産集計によると、2022年にはフィットネスクラブの倒産が目立ったという。その詳細とともに、2022年の倒産傾向のうち、ほかに目立ったものも併せて紹介。さらに今年2023年の傾向を考えてみよう。
フィットネスジムの倒産が大幅増加
帝国データバンクによると、2022年のフィットネスジム(スポーツジム)運営会社の倒産は27件となっており、2021年の9件から大幅に増加している。
これは2000年以降で過去最多であり、年間の倒産が20件台となったのも初となる。リーマンショック直後の2008年でも13件にとどまることを考えると非常に多いと分かるだろう。
その大きな理由として考えられるのが、コロナ禍においてフィットネスクラブが感染リスクの高い施設とされ、営業自粛要請などが相次いだことだ。一部では、リモート環境を活用した在宅サービスやアウトドア型の事業を展開するなど新たなニーズを掘り起こす流れもあったものの、2022年には物価高という逆風も加わりこれが大きな打撃となった。
物価高による生活費の上昇により、フィットネスクラブの会費出費はどうしても不要不急の支出として節約の対象になりやすい。また、光熱費の高騰から会費を値上げしたケースも多く、既存会員の退会の動きを強める結果を招いている。
ただ、フィットネスクラブは空調や照明も多く、プールの運営コストにも光熱費の高騰がダイレクトに響いてくる、そこで事業を継続するには会費を値上げしないわけにもいかないのだろう。
経済産業省の調査では、フィットネスクラブの総会員数は2021年よりは持ち直しているものの、コロナ禍の影響がまだそこまで出ていない2020年よりは8万人ほども少ない。会費の値上げの影響か総売上額は伸びているものの、倒産が増加していることを考えると会費の値上げでは運営コスト増を補えていないようだ。
個人会員数 | |
---|---|
2020年 | 188万8,240人 |
2021年 | 175万1,156人 |
2022年 | 181万971人 |
売上金額 | |
---|---|
2020年 | 2235億1,700万円 |
2021年 | 2450億3,100万円 |
2022年 | 2689億1,800万円 |
2022年の倒産の傾向は?
ここで全体の倒産件数も見てみよう。2022年の倒産件数は前年を361件上回る6376件で3年ぶりに増加。負債総額は2兆3,723億8,000万円と5年ぶりに2兆円台を記録したが、これは自動車部品メーカーのマレリホールディングスが1兆1,856億2,600万円という巨額の負債を抱えて経営破綻したことの影響も大きい。
帝国データバンクの倒産集計では“注目の倒産動向”をいくつか挙げているので、それも紹介しよう。
コロナ融資後倒産
新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための資金を貸し付ける、いわゆる“コロナ融資”の後に倒産したケースは2022年に384件発生。これは前年比2倍超の大幅増加となる。焦げ付き総額は推計335億円にのぼり、国民1人当たり換算で約280円の負担が生じている計算になる。
「ゾンビ企業」倒産
低金利の借入でなんとか存続してきた“ゾンビ企業”がいよいよ持ちこたえきれなくなってきた。借入金の利払いを営業利益で3年以上まかなうことができなかったゾンビ企業の倒産は332件発生し、3年ぶりに増加。2023年には実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の形となったコロナ融資の元金返済が迫り、実質免除されてきた利払いもスタートするため今後もゾンビ企業の倒産は増えるものと思われる。
人手不足倒産
人手不足による倒産は2022年には140件発生。3年ぶりの増加となっている。業種別では建設業や運輸業で全体の約4割を占めており、うち運輸業は前年から倍増。なお、運輸業では、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が規制強化されることによる運転手不足が危惧されている。“2024年問題”と通称されるこの問題を前にして、運輸業界ではすでに人手不足が深刻化している。
後継者難倒産
後継者不在による倒産は2022年に476件が発生し過去最多。その半数が「代表者の病気・死亡」を主因とする。
物価高(インフレ)倒産
物価高を理由とする倒産は2022年に320件発生。前年の2倍以上の急増となっており、過去最多。業種別では資材高騰の影響が大きい建設業が70件と最も多い。また、燃料費高騰により運輸業の物価高倒産も前年の4倍と急増した。
2023年も企業の倒産は増えていく
2023年については、人手不足が深刻化しているIT関連や個人向けサービス業で中小企業の倒産増加が危ぶまれる。
また、新型コロナ感染拡大予防のためとして実施されてきた経済活動の抑制が解除され、さまざまな業種で業務が正常化していく中で、経営が行き詰っている企業については改めて金融面の支援の是非が検討されなおすだろう。
コロナ禍においては、大量倒産が生じて社会が混乱しないよう、多くの企業がいわば下駄をはかせてもらっていたわけだが、今後、その下駄が取り去られていくことで倒産件数はさらに増えていくものと思われる。
個人個人としてはそうしたことを念頭に置き、生活を守るために自分にできる対策をやっておく心構えが必要だ。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
【関連記事】
・サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
・退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
・後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
・【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
・1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!