■主人公と一緒に答えを探していきたい
登山やジャズなど、自身の好きなものを題材に読者の心に響く作品を生み出している石塚さん。現在の連載が始まった当初は、ここまで続くとは予想していなかった。
「『BLUE GIANT』を描き始めた頃は、日本編の文化祭あたりで終わるかもしれないと思っていたんです。けど、気づいたら大がヨーロッパやアメリカに進出するようになって、想像以上の展開になっていました」
同シリーズは、単行本の巻末に描かれているインタビューの話も特徴的で、通常の物語から数年あるいは十年以上経った世界が描かれている。そこでは、主人公以外の登場人物が取材を受けている様子が描かれ、未来で主人公が活躍していることが伝わってくる。
「1巻でインタビューの話を入れてから、ずっと入れるようにしていますが、辻褄を合わせるために大を一時帰国させたり、苦労したこともありましたね(笑)」
家族や同級生、サックスの師匠、海外で出会った人々など、さまざまな視点から話される大の活躍は、読者に一層の期待感を与えてくれる。今後の漫画の展開や次回作など、石塚さんは何を思うのだろうか。
「次回作についてはまだ考えていないんですが、まずは今の作品を最後まで描き切りたいですね。大は世界一のジャズプレイヤーを目指していますが、“世界一が何なのか”っていうのは僕自身まだ答えを出せていません。だからこそ『BLUE GIANT』を描きながら、大と一緒に世界一の答えを見つけていきたいです」
【石塚真一さんの愛用品】
■テナーサックス|セルマー・スーパーアクション・シリーズ
見た目のカッコよさに惹かれてテナーサックスを選んだが、購入する際には店員さんに吹いてもらって音を確かめた。20年以上の付き合いだが、漫画家になった今では原稿を作る際に欠かせない存在だ。このサックスを構えながら作品の構図を考えている。
■Gペン
アシスタント時代、先生の使っているペンに憧れて購入したと言う。持ち手の部分の凹凸が気に入っており、塗装も薄くなっている。ペン先は交換可能だが、今では取り扱っているお店が少なくなっているのだとか。
■ポスター|ART KANE JAZZ PORTRAIT HARLEM 1958
石塚さんがアメリカ取材へ行った際に一目惚れした写真。額装はお茶の水で入れてもらったと言う。アート・ブレイキーやソニー・ロリンズ、セロニアス・モンクなど、57人もの名だたるミュージシャンが一堂に会した貴重な一枚だ。
【作品情報】
漫画『BLUE GIANT』シリーズ
©石塚真一・NUMUBER8・小学館
第1部の地元・仙台や東京での活躍を描く『BLUE GIANT』に始まり、第2部の『BLUE GIANT SUPREME』では主人公が単身でヨーロッパへと向かう。そして、現在連載中の第3部『BLUE GIANT EXPLORER』はアメリカが舞台。ジャズがテーマとなっているが、人とのつながりや世界一を目指す大の姿は、性別や年齢に関係なく胸を熱くさせてくれる。
出版社:小学館
作者:石塚真一、NUMBER 8
映画『BLUE GIANT』
©2023映画『BLUE GIANT』 製作委員会 ©石塚真一・小学館
ジャズに魅せられた主人公・宮本 大がさまざまな出会いを通じ、世界一のジャズプレイヤーを目指す物語。映画では第1部の内容が描かれており、仙台から上京した大はピアニストやドラマーとトリオを組むことになる。
監督:⽴川譲
脚本:NUMBER 8
声優:山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音 ほか
公開日:2023年2月17日(金)
文/菅 堅太 撮影/井野友樹
提供元・男の隠れ家デジタル
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