増えつづけるコインランドリーの背景には“節税”がある。ここでは、“コインランドリー節税”とも呼ばれるその仕組みについて解説。税制の変更により今後は節税面でのメリットが薄くなることも説明する。

コインランドリーが近年増加している

厚生労働省「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」によると、1996年に全国で1万228店舗存在したコインランドリーは、2013年には1万6,693店舗と約1.6倍にも増えている。

さらに、業界紙の調査によると2017年に2万店を超え、2019年には2万1,000店を超えたともいう。23年間で約2倍になったことになり、主に都市部で急速に増えたようだ。

さらに、現在の市場規模は推定1,000億円超、1店舗あたりの年商は500万円超という試算もある。

以前のコインランドリーは洗濯機を持たない人が使うものという印象だったが、最近のコインランドリーは大きな寝具やスニーカーなど、一般家庭の洗濯機では洗えないものにも対応した機種が導入され新たなニーズを生み出している。

また、ひと昔前の家庭では専業主婦が昼間のうちに洗濯するスタイルが一般的だったのに対し、現在では夫婦で共働きをして洗濯する時間が夜になるケースも増え、これもコインランドリー盛況の理由になっていると考えられる。

コインランドリーであれば、近所へ漏れる音や日中の洗濯干しを気にすることなく、いつでも洗濯・乾燥を行うことができる。梅雨の季節だけコインランドリーを利用するという人も少なくないはずだ。

コインランドリー経営による節税の仕組み

コインランドリーが増えつづけている理由には、経営する側のメリットの多さも挙げられる。

たとえば、コインランドリー経営なら、不動産投資で家賃収入を得る場合とは違い空室リスクがない。また、一般的な店舗経営のように常駐のスタッフを雇う必要がなく、清掃や集金くらいにしか人件費がかからない。さらに、運営自体は専門の業者に任せてしまうという手もある。

狭いスペースで開業できるのも魅力のひとつだろう。先の厚生労働省の調査資料によると、2013年のデータではあるが、洗濯機台数が1~5台の店舗が57%、6~10台が39%となっている。それくらい少ない台数でもいいのなら、かなり狭いスペースでも開業できる。

コインランドリー経営で利用できる3つの優遇税制

コインランドリーの経営者サイドのメリットとして、税金対策に適しているという点も大きい。コインランドリー経営で節税できる3つの優遇税制について紹介しよう。

・即時償却または税額控除(中小企業経営強化税制)
中小企業経営強化税制により、所定の条件を満たしていれば、法人税においてコインランドリーに投資した分を経費として一括で即時償却できる。もしくは、投資額の7%相当額の税額控除を利用できる。資本金(または出資金)の額が3,000万円を超えていなければ10%分の税額控除となる。

この中小企業経営強化税制は2023年3月末までの適用となっていたところ、2022年12月23日に閣議決定した「令和5年度税制改正の大綱」により適用期限が2年間延長された。ただし、コインランドリーについては管理を外部に委託した場合は除外されることになった。これはあからさまな“コインランドリー節税”潰しとみられている。

・固定資産税が3年間ゼロ~1/2に(中小企業等経営強化法よる特例)
中小企業等経営強化法の特例により、所定の条件を満たしていれば固定資産税が3年間ゼロ~1/2に軽減される。ただし、2023年3月末までに取得した分が対象となる。

これについても「令和5年度税制改正の大綱」で変更が加えられ、2025年3月31まで特例が適用されるとした上で、所定の条件を満たすことで固定資産税が3年間1/2に軽減される内容となった。また、給与に関する条件をクリアすると固定資産税が最大5年間1/3に軽減される仕組みも導入される。

いずれにせよ“固定資産税ゼロ”はなくなったわけで、経営者サイドからすると明らかな改悪といえる。

・相続税における土地の評価額が8割減に(小規模宅地等の特例)
相続が開始される直前にコインランドリーを経営していた土地がある場合、「特定事業用宅地等」に該当するとみなされ、相続税の課税価格に参入すべき土地の価額が80%分減額される(400平米まで)。

コインランドリー経営のこれから

優遇税制の事実上の改悪はあるものの、やり方次第ではいまだメリットを得ることはできる。

そして、コインランドリーは都市部では飽和しつつあるものの、地方や郊外ではいまだ伸びしろがあると考えていいだろう。ただし、2022年中頃からの光熱費高騰の影響もあり、しばらくは店舗数の伸びが鈍化するものと思われる。

なお、特に郊外型店舗の場合、洗濯待ちの時間を別の消費につなげるための他店舗との協業・併設といった形態をとるかどうかも、かなり経営状態を左右することになりそうだ。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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