老後の住まいに悩む人は多い。新規に家を買う、あるいは持ち家を買い替える場合に住宅ローンは組めるのか? むしろ賃貸のほうがいいのか? UR賃貸住宅は? サービス付き高齢者住宅についてはどうなのか? ここではそんなさまざまな選択肢を紹介しよう。
シニア世代以降でもマイホーム購入はできる
転勤が多い、あるいが社宅が充実している会社に勤めていたような人では、定年退職までマイホームを購入してこなかったケースも珍しくない。その場合、定年退職が近づいてきた段階で初めてマイホームの購入を検討することがあるだろう。だが、例えば50代後半になって買えるものだろうか?
結論から言えば、主要な金融機関の住宅ローンでは70歳まで借入可能で80歳までに完済する形のものが多いため、50代後半でもマイホーム購入は可能だ。たとえば、三井住友銀行の住宅ローンの年齢条件は、「お借入時満18歳以上満70歳の誕生日までの方で、完済時満80歳の誕生日までの方」となっている。
独立行政法人住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2022年)でも、調査対象となった住宅ローン利用者1,500名のうち7.7%から、住宅ローン契約時の年齢が50代であったという回答が得られている。
ただし、返済期間が必然的に短くなることを考えると、頭金をかなり多めに設定して住宅ローンはあくまでも補助的に使うという形が望ましい。
高齢者も利用できる賃貸住宅は?
一般的に60歳以上になると賃貸物件は借りにくくなるため、公共性の高いUR(都市再生機構)が提供する物件など選択肢は限られてくる。なお、URには高齢者向けのバリアフリー住宅(高齢者向け優良賃貸住宅)を、国とURが家賃の一部を負担する形で提供する仕組みもある。
また2011年の法律改正に伴い登場した「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)も、シルバー世代になったときの住まいの選択肢として注目したい。これは、ケアの専門家が少なくとも日中は建物に常駐し、安否確認サービスや生活相談サービスを提供する住宅のことだ。
国土交通省の資料によると、家賃と共益費、サービス費(生活相談・見守り)を合計した費用の全国平均は月額約11万円程度となっている。厚生年金の受給額の平均は14万5,665円(2021年)なので、年金だけでサ高住の諸費用と最低限の食費・光熱費をなんとかまかなえると考えていいだろう。
現在の持ち家に住みつつ老後の生活資金を得る方法も
その他、持ち家を担保にして老後の生活資金を借入、家にはそのまま継続して住み続け、死亡時に担保の不動産を処分して借入金を返済する「リバースモーゲージ」という仕組みや、先に持ち家を売却してまとまった額を得た後、その同じ家で賃貸借契約を結んで引き続き居住する「リースバック」という仕組みがある。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、そうした点も踏まえ、持ち家のある人は老後の暮らし方の選択肢として一度検討してみてもいいだろう。
もしもの保険はどうする?
ほとんどの住宅ローンでは団体信用生命保険(団信)の契約が必要となる。団信とは、住宅ローンを契約した人が死亡・高度障害の状態に陥った場合に保険金が給付され、そこから残債を一括で返済する保険だ。
問題は、シニア層以上では健康状態を理由として団信に入れないケースがあることだ。しかし、その場合でも、一部の金融機関で提供されている、加入条件がより緩和された団信(ワイド団信)を利用できる場合がある。住宅ローンの金利が高くなるというデメリットがあるものの、どうしても住宅を買いたい人にとってはありがたい仕組みといえる。
老後の住まいについて考えるのに早すぎるということはない
シニア世代やシルバー世代にとって、住宅購入や賃貸住宅への入居のハードルが高いのは否めないが、その分、さまざまな制度のサポートもある。そうした制度も念頭に置きつつ、老後の住まいについて早いうちから考えておくことをおすすめする。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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