郊外の地へ車で旅行に出かけた際、近くにガソリンスタンドがなくてヒヤッとした・・・こんな経験は誰もが経験したことがあるのではないだろうか。ガソリンスタンドが少ない郊外へ旅行に出かけた場合のほか、高速道路で渋滞に巻き込まれた場合など、ガソリンをすぐに給油できない環境は意外と多い。もしガス欠となってしまった場合、どうなるのかご存じだろうか。今回は、弁護士がガス欠になってしまった場合、法的にどういった責任が発生するのかを紹介する。

車両運転者に生じる一般的な責任

一般的に車両運転者には、①民事上の責任、②行政上の責任、③刑事上の責任、の3種類の責任が発生する。民事上の責任とは、事故を起こして他人にけがをさせてしまった場合の損害賠償責任などである。行政上の責任とは、交通違反により運転免許が取り消されるなどの行政処分である。刑事上の責任とは、交通事故により他人を死傷させてしまった場合に課される罰金〇万円や懲役〇年などの刑事処分である。では、ガス欠となってしまった場合、車両運転者にどのような責任が発生するのだろうか。

一般道でガス欠になった場合

実は、一般道でガス欠になったとしても行政上の責任や刑事上の責任は発生しない。もちろん速やかに車両を道路脇に移動させるなど、他の交通を妨げないようにしなければならず、ガス欠が原因で事故を起こした場合は何らかの責任が発生する場合はある。しかし、ガス欠になったこと自体で何らかの処分が下されるわけではない。

高速道路でガス欠になった場合

問題は、高速道路上でガス欠となった場合である。道路交通法75条の10は「自動車の運転者は、高速自動車国道等において、自動車の燃料不足のため自動車を運転することができなくなることを防止するための措置を講じなければならない。」と規定している。すなわち、運転者は、高速道路ではガス欠にならないようにしなければならないということである。これに違反すると、行政処分が下されることになる。具体的には「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」とされ、違反点数として2点の減点と、反則金9,000円(普通車の場合)という行政処分が課されることになる。

違反点数が6点未満の場合は反則金を納付すれば行政上の責任のみで終了し、原則として刑事上の責任が問われることはない。しかし、道路交通法119条1項19号には、同法75条の10に違反した者は3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられると規定されており、反則金を納付しなかった場合刑事手続に移行し、起訴され有罪になると刑事処分を受けることになってしまう。

このように、高速道路でのガス欠は一般道と異なり道路交通法違反となってしまうため、高速道路でのガソリンの量には十分に留意する必要がある。

そのほかの責任

ガス欠により民事上の責任が発生する可能性もある。例えば、車を道路脇に移動させなかった結果、他の車に追突されるなどした場合には損害賠償責任が発生する。また、ガス欠自体により課される処分のほか、他人を死傷させてしまった場合などは過失運転致死傷罪に問われる可能性もある。ガス欠になった場合は他の車が事故を起こさないよう、迅速に対応しなければならない。

トラブル回避のための対策を

高速道路でのガス欠が道路交通法違反となることを知らなかった方もいたのではないだろうか。高速道路でのトラブルによりJAFが出動する理由として、「燃料切れ」は四輪で第2位、二輪で第1位となっており、高速道路ではよく起こるトラブルの一つとなっている 。高速道路では思わぬ渋滞に巻き込まれ、サービスエリアのガソリンスタンドまでなかなかたどり着けない状況に陥る可能性もある。ぜひガソリンに余裕をもってドライブを楽しんでいただきたい。

文・幸谷泰造
弁護士。東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻、成蹊大学法科大学院卒業。ソニー(株)の知的財産部で国内外の特許関連業務を担当。その後、弁護士として特許訴訟や無効審判等の係争業務をはじめ、技術系企業の契約関連業務、知的財産デューディリジェンス、知的財産コンサルティングなど、知的財産やIT関連法務に数多く従事。

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