コスト、タイムパフォーマンスが向上

東京都内の銭湯の入浴料金は500円なので、毎日利用した場合の水道・光熱費は「風呂あり物件」とさほど変わらないかもしれない。しかし、「風呂なし物件」は家賃を抑えられる分、トータルの生活コストを節約しやすいのは間違いない。

そうして浮いたお金は自分の趣味や将来の投資などに回せるし、都心部へのアクセスが良いエリアの「風呂なし物件」に住めば通勤時間を短縮することもできる。コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを簡単に高められるメリットは、合理的なZ世代でなくとも魅力的に映るはずだ。

「風呂なし物件」のリスクとは?

一方、「風呂なし物件」に住む際は注意しなければならない点もある。厚生労働省の2021年度衛生行政報告によると、銭湯をはじめとする公衆浴場の数は年々減少している。最寄りの公衆浴場が突然、営業を終了してしまうリスクを想定しておかなければならない。エネルギー価格の高騰に苦しんでいるのは家庭だけではない。公衆浴場も同じなのだ。

また、近所に公衆浴場があるとしても、仕事を終えて帰宅するのが深夜になれば足を運ぶことさえままならないだろう。冬場はともかく、真夏にそんな状況が続いてしまうとどうなるかは想像に難くない。時間的な余裕がないときに取れる手段を確保できなければ、合理的な生活を送るどころではなくなってしまう。

さらに、古い木造アパートの「風呂なし物件」は、オートロックやインターホンなどの防犯設備がないのが当たり前だ。鉄骨造りや鉄筋コンクリートなどの建物に比べると冷暖房の効率が大幅に下がることも予想されるし、居室の壁が薄く防音性が低ければプライバシーを守るのに苦労するだろう。隣室や上室から漏れる生活音に悩まされる可能性もある。