経営人材不足解消に向けた、戦略的人事とは

それでは、このような状態で、何が「経営人材」の不足を解決する糸口となるのでしょうか。

私は大きく2つの方向性があると考えます。

①社外から経営人材の採用を行う

実は先述した魚の実験で、一度学習性無力感になってしまった魚が餌を再び食べようとする唯一の方法がありました。

それは、同じ水槽の中に「元気な魚」をいれることだったのです。

元気な魚は、ガラス板にぶつかった経験がないので、当然ながら餌を食べようとします。それを見た無気力になってしまった魚も、「もしかしたら、自分でも食べられるのでは」と思い、餌を少しずつ食べました。そうすると、「なんだ、大丈夫だったか」と気づいて、進んで餌を食べようとします。

まさに、この原理が組織にも当てはまるのではないかと思うのです。

組織の暗黙知に浸かっていない、新たな視点と新たな発想を持った経営人材がこの組織に長年染み付いた風土を改革への一投石になるのではないでしょうか。

この外部から登用した経営人材が自ら先頭に立ち、改革を推進することで、周りの社員も「このようにすれば、この会社だってどんどん前に進むのだ」と感じるはずです。

まさに、このようなチェンジリーダーこそ、地方の中小企業にこそ必要な人材です。

②社内から経営人材のポテンシャルがある人材を発掘する

もう1つの視点は、「本当に社内にチェンジリーダーとなれる人はいないのだろうか」という視点です。

私は、このチェンジリーダーになれる人は、管理職とは限らないと考えています。役職は立場、雇用体系一切関係なく、「誰でも」なれる可能性はあります。

しかもこのような人は、いわゆる「優秀」な人であるとも限りません。一般的な優秀な人は、組織の暗黙知を身に着け、ミスや失敗がないようにオペレーションを回しているという人も多いです。このような人は、組織の変化を阻害する可能性もあります。

今までの一般的な「仕事ができる」という概念でこのチェンジリーダーを発掘しようとしても難しいのが現状です。まさに、人材登用の新たなパラダイムシフトが今求められているように感じます。

そこで、私から1つ紹介したいのは、「自律」という観点です。

・自分の願い・想いを自分で理解している
・自らの意志に基づいて行動に移している
・必要なだけその行動を継続させている
・自らの望む結果(成果・現実)を周囲との相互作用を通して創り出すことができる

上記をクリアした自律性の高い人材は意識的に、もしくは無意識的に自らの願いやビジョンを持っており、内発的エネルギーが非常に高いことが多いのです。

内発的エネルギーが高いということは「心にゆとりのある人」と捉えることもできますが、この「心のゆとり」が「覚悟」に直結します。

「自社の成長やミッションを果たすことに覚悟を決めている人のする仕事」と「自分の意思が定まらず、与えられた業務のみをやろうとする人の仕事」とでは、成果が大きく変わるものです。

このような人材こそ、もしかしたら、新入社員の中にもいるかもしれないし、これまでスポットライトがなかなか当たらなかった人かもしれません。

しかし、この「意外性」が組織に大きな変化をもたらすことも同時に多くあることです。これまで、「ただの変わった人」「組織不適応」などと思っていた人材が実は変革の主役になる事例はこれまで多くありました。

したがって、まずは「見つけよう」とする姿勢こそが大事なのではないでしょうか。