高額所得者の中でも、年収が1,000万円を超えると「大台に乗った」という印象がある。しかし、それほどの年収でも貯蓄がゼロの人が少なからずいるという。どういうことなのだろうか。意外な高額所得者の生活に迫ってみよう。
会社員の4.6%が年収1,000万円超
国税庁の「令和2年分 申告所得税標本調査」によると、申告納税者657万5,000人の中で、所得金額が1,000万円を超える人は84万9,000人で、全体の12.9%。内訳は以下のとおりだ。
所得金額 | 納税者数 | % |
---|---|---|
1,000万円超2,000万円以下 | 54万人 | 8.2% |
2,000万円超5,000万円以下 | 24万6,000人 | 3.7% |
5,000万円超1億円以下 | 4万4,000人 | 0.7% |
1億円超 | 1万9,000人 | 0.3% |
では、会社に勤めていて給与をもらっている人だけのデータだと、どうなるのだろうか。
国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者(1年を通じて勤務した者)5,244万6,000人のうち、年間給与額が1,000万円を超えるのは240万6,000人で、全体の4.6%だった。内訳は以下のとおり。
年間給与額 | 人数 | % |
---|---|---|
1,000万円超1,500万円以下 | 175万3,000人 | 3.4% |
1,500万円超2,000万円以下 | 38万4,000人 | 0.7% |
2,000万円超2,500万円以下 | 12万4,000人 | 0.2% |
2,500万円超 | 14万5,000人 | 0.3% |
これを「意外に多い」と思うか「意外に少ない」と思うかは人それぞれだろうが、平らにならしたとすれば、友人・知人・親戚などの中に1~2名は年収1,000万円以上の人がいることになりそうだ。
収入の高い業種の共通点は?
給与所得者の場合、どの業種で年収1,000万円超えが多いのだろうか。
先ほどの「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、男性の場合、事業所の規模が5,000人以上の企業で年収1,000万円を超える人の割合が10%を超えることがわかる(11.8%)。逆に事業所の規模が小さくなると、年収1,000万円の人の割合が減る。
資本金で見てみると、資本金10億円以上の株式会社で、男性は年収1,000万円を超える人の割合が10%を超える(12.9%)。
一方、業種別のデータでは1,000万円超という区分はないが、平均給与が年間800万円超の区分でいうと、その割合が最も高い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」(33.7%)だ。次いで「金融業、保険業」(25.0%)、「情報通信業」(20.8%)、「学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業」(16.2%)となっている。
いずれも広義の社会インフラにかかわる業種といえるだろう。
年収1,000万円の場合の手取り額
年収が1,000万円であっても、それがそのまま手取りになるわけではない。例えば所得税の計算では、課税される所得金額が900万~1,799万円の範囲では税率が33%で、算出された税額から153万6,000円が控除される。
一方、給与所得控除では収入額が850万円を超えると195万円が控除され、それ以上は控除額が上がらない。一定の所得金額を超えると、高額所得に応じた控除額にはならないということだ。
その他、社会保険料や住民税などを支払うため、額面年収1,000万円の人の手取りは700万~800万円ほどになると考えられる。
年収1,000万円で貯蓄ゼロの人の割合は?
年収1,000万円でも貯蓄ゼロの人が少なからずいると書いたが、具体的にはどれくらいいるのだろうか?
2021年度の金融中央広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」における2人以上世帯を対象にした調査によると、年収1,000万超1,200万円未満の人のうち、貯蓄を含む金融資産を保有していない人は10.8%。10人に1人が貯蓄ゼロということだ。
なお、年収1,000万超1,200万円未満の範囲の人が保有する金融資産額の平均値は2,361万円、中央値は1,200万円となっている。
年収1,000万円の人の生活費は?
貯蓄を含む金融資産がゼロということは、入ってきたお金がそのまま出ていっているということだ。年収が1,000万円ので、そんなことがあるのだろうか。
総務省の「家計調査(2021年度)」によると、年収1,000万~1,250万円の2人以上世帯の1ヵ月あたりの消費支出の合計は平均39万1,134円。ちなみに年収500万~550万円の人の平均は25万933円だ。
「年収500万円の人が月25万円の支出で済んでいるのなら、それくらいまで節約することもできるのでは」と考えるかもしれないが、高額所得者は同じくらいの所得の人と付き合うため、何かと出費が多い。
また、時間をムダにせず仕事でのパフォーマンスを最大限に引き出すため、会社の近くなど都市中心部に住むケースも多いだろう。その場合、家賃や生活費が高くつくのはいうまでもない。
つまり、高額所得者の生活にはそれなりにお金がかかるということであり、家族構成にもよるが、それが年収と同じレベルまで膨らむケースもあると考えられる。
税額控除や公的サービスで不利になる
高額所得者は、税額控除や公的サービスなどにおいて所得制限がかかることもあり、それも生活費が高くなる一因となっている。
例えば配偶者控除・配偶者特別控除では、控除を受けたい納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は控除を受けられない。
また、住宅ローン控除にも所得制限がある。例えば新築の場合の控除(住宅借入金等特別控除)では、控除を受けたい年の合計所得金額が1,000万円を超えると、控除を受けられない。
子育て世帯にとっては、児童手当の所得制限も気になるところだ。例えば、子ども1人と年収103万円以下の配偶者がいる場合、諸控除を適用した後の所得額が934万円以上であれば、児童手当は支給されない。
さらに、国の認可を受けた認可保育園では収入に応じて保育料が高くなるよう設定されているため、高額所得者ほど負担が大きい。
「高額所得者=リッチな暮らし」ではない
高額所得者だからといって、必ずしもリッチな暮らしができるわけではない。
もちろん、年収が5,000万円や1億円となると話は変わるが、少なくとも年収が1,000万円くらいであれば、平均的な年収の人よりも少しだけぜいたくができるくらいのスケール感と考えてよいだろう。
むしろ、ぜいたくが過ぎると、貯蓄がほとんどないという事態にもなりかねない。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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