大学入学共通テストも終わり一般入試期日が迫る中、高校の進路指導で教師から「推薦入試は逃げ」といわれたとの投稿がネット上で話題になった。しかし、一般入試に比べて早く合格が決まる推薦入試者数は、今や各大学で多数を占める時代だ。推薦入試が増えている現状やそのメリットを紹介するとともに、「逃げ」といわれた要因などについて考えてみたい。

私立では6割を占める推薦入試

近年は「推薦入試」による大学入学者の比率が増えており、一般の入学試験を受けずに何らかの推薦制度を使って入学した学生は、私立大学で実に6割近くにのぼる。「推薦入試」は、高等学校長の推薦を受けることで出願できる「学校推薦型選抜(「公募制推薦」と「指定校推薦」)」と、推薦がなくても個人で出願できる「総合型選抜(AO入試)」の2種類。文部科学省は毎年「推薦入試」の割合など、その内訳を発表している。

文部科学省が2022年2月に発表した2021年度の「国公私立大学入学者選抜実施概要」によると、入学者全体に占める「学校推薦型選抜」の割合は国立が12.1%、公立が26.1%、私立が43.5%。「総合型選抜」の割合は国立が5.5%、公立が3.8%、私立が14.7%だった。私立でいえば「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」を合わせて58.2%と、60%近い人が推薦入試で入学している。

旺文社ムックの「2022年度用 大学の真の実力 情報公開BOOK」によると、早稲田や慶応、上智など私立トップレベルの大学においても推薦入試が増加し、一般入試による入学者は半数を割っているという。毎年推薦入試の結果が出る12月には、実際の大学入試の半分が終了。多くの私立大学は付属校からの進学も含めて、定員の半数以上にあたる入学者を確保しているとの見方だ。

国立大学でも「入学者の3割を書類選考・面接・小論文などで選ぶ総合型選抜・学校推薦型選抜にする」という国立大学協会の方針もあり、約2割が推薦入試で入学。文部科学省が2022年10月に発表した「2023年度国公立大学入学者選抜概要」においても、国立、公立とも推薦入試の募集人員を増やしており、年内に入学者を確保する動きが加速している。

早期合格などメリットも多い

推薦入試には、さまざまなメリットがある。

まず挙げられるのは、結果が早くわかることだ。一般選抜は1月末から3月にかけて実施されるが、推薦入試は先行して行われ、私立は11月~12月、国立は1月の後半から2月初旬にかけて合否が発表される。ただし、中には1月に実施される大学入学共通テストを選考に利用する大学もあり、その場合は2月頃に合否が発表される。

スポーツなど一芸に秀でた人の出願が多い「総合型選抜」については、6月頃から出願するため選考期間は長いが、合否は早ければ10月末、遅くとも年明けにはわかる。

また、「評定平均値」など各大学が定めている出願条件があらかじめわかっているため、自分の学力と比較しやすい。「学校推薦型選抜」は「公募制推薦」「指定校推薦」とも高等学校長の推薦が必要になるため、推薦されれば合格への一定ラインに達していることになる。特に「指定校推薦」は大学から推薦校として指定されていることが条件なので、高校内で推薦を勝ち取れば、合格する可能性はかなり高い。

一般入試と比べて試験科目が少なく、受験勉強の負担が軽減されることもメリットだ。「指定校推薦」の場合は学力試験がなく、面接や小論文のみというケースもある。

「推薦入試」では学力による審査だけでなく、部活や生徒会、ボランティアなど課外活動の実績が役立つことも多い。受験生の個性や意欲を評価してくれるため、一般入試で目指す場合よりも1ランク上の大学を狙うことも可能だ。

さらに、一般入試と比べて倍率が低い場合が多いため、合格する可能性も高くなる。もし不合格でも一般入試で同じ大学に再チャレンジできるので合格のチャンスが増え、浪人となるリスクが減るといえるだろう。

受験や塾にかかる費用も抑えられる。

昨今の受験生が受ける大学の数は多ければ20校ともいわれており、私立大学の受験料は1校当たり3万~3万5,000円が相場であるため、場合によっては受験料だけで60万円以上もかかることになる。一方で推薦入試によって合格すれば、他大学を受験する費用は不要だ。

また推薦入試で12月中に結果がわかれば、その後の通塾期間を短縮でき、塾の費用を抑えられる。浪人せずに済めば、少なくとも1年間は発生する予備校の費用もかからない。

まとめ

「推薦入試は逃げ」といわれたとの投稿には多くの人が反応し、「逃げではない」との意見が大半を占めた。こういった反応は当然であり、常識的に考えれば、整備された受験制度に対して教師が「逃げ」と切り捨てることは許されない。

さらに、これだけ推薦入試が増えている現状を踏まえると、時代遅れな考え方ともいえるだろう。あるいは偏差値が高い高校の場合、一般入試の結果で上位大学合格者数の実績アップにつなげたいという思惑があるのかもしれない。

大学受験をどう乗り切るかは今後長く続く人生で初ともいえる大きな決断であり、大切なのはその選択肢を自分自身で決めたということ。冷静に判断した結果であれば、自信を持って進むべきだ。

少子化を背景に入試制度の多様化が進む中、早期に入学者を確保できる推薦入試の枠はさらに広がることが予想される。大学に選ばれるのではなく、受験生が大学を選ぶという時代が近づいているのかもしれない。

執筆/渡辺友絵

<参照URL>
https://manabi.benesse.ne.jp/daigaku/nyushi/nyushi_info/gakkousuisen.html
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00003.htm
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68844?page=2
https://eic.obunsha.co.jp/resource/topics/0611/1105.pdf
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1412102_00008.htm
https://www.nihon-u.ac.jp/admission_info/uploads/files/20220523220007.pdf
https://www.nihon-u.ac.jp/admission_info/uploads/files/20220523215957.pdf
https://www.keinet.ne.jp/special/encourage/advice/how-many.html
https://www.canadapageants.com/heigan1
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/764.html
https://togetter.com/li/2044819
https://shingaku.mynavi.jp/cnt/etc/column/step6/recommendation/
https://www.keinet.ne.jp/exam/basic/structure/recommend.html

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