東急本店がついに1月末で閉店

2023年春に解体される渋谷の東急本店が、1月31日に閉店する。再開発計画に伴うもので2021年に発表されていたが、ついに56年の歴史に幕を下ろす。

地方で加速していた百貨店閉店の波は、近年東京にも押し寄せている。「GINZA SIX」に転換した銀座松坂屋をはじめ、本館営業が終了し複合商業施設に転じる可能性が高い新宿小田急、さらにヨドバシカメラが大規模出店を予定している池袋西武本店など、ターミナル駅の旗艦店が本来の「百貨店」という事業形態から次々に撤退。このままでは、東京からデパートが消えてしまうのではないかという危機感も漂う。

日本百貨店協会によれば、2022年4月末時点の加盟店店舗数は190店舗と、249店舗あった10年前に比べると約4分の1にあたる59店舗が閉鎖している。加盟全店の2021年度売上高の合計は約4兆4,180億円で、10年前より約2兆円減少している。

2021年度決算では、売上上位30社の百貨店すべてが減収となった。最終利益が黒字だったのはわずか3社で、27社が最終赤字に陥っている。

富裕層が多い高級住宅地で営業

東急百貨店本店は1967年11月に開店し、1984年と2002年の全館リニューアルを経て現在に至る。地上9階(9階は屋上)・地下3階で、電鉄系百貨店でありながらターミナル駅直結ではない。高級住宅地の松濤や神山町などに近いため多くの富裕層顧客を抱え、都内百貨店の中では来店者全体に占める徒歩来店者の割合が最も高いといわれている。

隣接する「Bunkamura」は“日本初の大型複合文化施設”として1989年にオープンし、オーチャードホールをはじめ、美術館や映画館など幅広いジャンルの文化・芸術を体感できる場を提供。エンタテインメントの発信基地として注目を浴び、年間約300万人が訪れている。

渋谷のランドマークといえる複合施設に転換

東急は2021年5月、不動産開発投資を手がけるLキャタルトンリアルエステートと東急百貨店の3社による再開発計画を発表。2022年7月には「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」と名付けた同計画の詳細を明らかにし、地上36階・地下4階、高さ164.8mの複合商業施設を2027年度に竣工予定とした。

施設はホテルと賃貸レジデンス、店舗などのリテール部門で構成される。建築デザインには国際的に高評価を得ているノルウェーの建築デザイン事務所「スノヘッタ」を起用し、ホテルは「スワイヤー・ホテルズ」が運営する「ザ・ハウス・コレクティブ」が日本に初進出する。クリエイターやエグゼクティブに人気のラグジュアリーブランドで、ユニークなコンセプトに基づく洗練された宿泊体験を提供する。

隣接の「Bunkamura」は週末を中心に限定営業するオーチャードホールを除き、2023年4月から休館となる。地上8階・地下2階の施設に生まれ変わり、リニューアルオープン後は東急グループ文化事業の牽引役としての役目を引き続き担う。

このように渋谷東急本店は複合商業施設として、渋谷の新たなランドマークを目指す。一方で、例えば「GINZA SIX」では昨今テナントの撤退が相次いでいるとの報道もあり、渋谷においても見通しは甘くないとの見方もある。都内の百貨店の多くは業績が低迷していることから、今後複合商業施設への転換が続く可能性も否定できない。

執筆/渡辺友絵

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