個人間のお金の貸し借りで利息を取ることは合法だが、無制限に利率を設定できるわけではない。ちまたでは、個人間のお金の貸し借りであれば、最大で年109.5%まで利息を取れるといわれる。年109.5%の利息は法律上、問題ないのだろうか。

利息制限法と出資法の違い

お金の貸し借りに伴う利息を定めている法律は、利息制限法と出資法がある。いずれも利率の上限を定めている。しかし、両者の大きな違いは、出資法が違反した場合の罰則を規定しているのに対し、利息制限法には罰則規定がないところだ。

以下、両者の利率に関する規定内容を確認する。

利息制限法

まず、利息制限法を見ると、同法は元本の金額に応じて異なる利率の上限を設けている。区分は3つあり、元本が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%となっている。

お金の賃借をめぐって契約した利息のうち、これらの利率に基づいて計算した金額を超える部分は「無効とする」と定めているのが利息制限法だ。利率の上限規定は、個人間のお金の貸し借りであれ、消費者金融など事業者による貸し付けであれ、いずれにも適用される。

にもかかわらず、個人間のお金の貸し借りは、年109.5%まで利率を設定できると信じられているのはなぜか。

出資法

それは出資法第5条の規定に基づく。同条は「金銭の貸付けを行う者が、年109.5%(1日当たり0.3%)を超える割合による利息の契約をしたとき、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方を科す」としている。

同条第2項は、「業として」(事業として)金銭の貸し付けを行う場合は、年20%を超える割合で利息の契約をしたとき、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方を科す」としている。

つまり、出資法上の利率の上限は、個人間のお金の貸し借りだと年109.5%、事業者による貸し付けだと年20%であり、この上限を超える利息契約または利息の受領は、刑事罰の対象になるということだ。

利息の上限を定める法律はなぜ2つ?

お金の貸し借りに伴う利息に関して、法律が2つあるのはなぜか。

そもそも、利息制限法に罰則規定がないからといって、利息制限法に何の効果もないわけではない。同法が、利息に関して法定利率の超過分を「無効とする」と定めているように、利息制限法の上限を超える利率での貸し付けは、民事上、無効となる。

その上で、利息制限法の上限として最も高い利率の年20%を超える利率で、「業として」(事業として)貸し付けを行った場合、刑事罰の対象とすると定めているのが出資法だ。

個人間の貸し付けが刑事罰の対象になる利率は年109.5%と、「業として」貸し付けを行う場合とは大きな開きがある。これは消費者金融による高金利での貸し付けと過度な取り立てが社会問題となり、規制が強まったことが背景にある。

かつて存在したグレーゾーン金利

2010年以前は、利息制限法の上限を超えるものの、法的には有効とみなされるグレーゾーン金利が存在した。法改正前の出資法は利息の上限を年29.2%と規定しており、利息制限法の上限と出資法の上限の間には、一種のすき間があった。

もっとも、利息制限法は、法定の上限を超える利息を「無効とする」内容であり、出資法の上限との間にすき間があったとしても、利息制限法の上限を超える利息には効力が及ぶはずである。

しかし、法改正前は、利息制限法の上限を超える利率でも、出資法の範囲内で一定の条件を満たせば有効とみなされる「みなし弁済」が認められていた。一定の条件も、貸金業登録を受けていることなど厳しい内容ではなく、事実上、出資法上限の年29.2%までの利息であれば合法だった。

こうしたことから、利息制限法の上限を超え、出資法上限の年29.2%以内に収まる金利はグレーゾーン金利と呼ばれていた。

個人間貸付けの出資法処罰対象は年109.5%超のまま

このような法制度の不備が消費者金融による高金利での貸し付けを可能にし、多重債務を理由とした自殺者の増加といった社会問題を引き起こした。

法改正により、「業として」貸し付けを行う場合の利息の上限は年20%に引き下げられ、グレーゾーン金利はもう存在しない。一方、個人間の貸し付けで、出資法が処罰の対象としている利率は年109.5%超のままとなっており、以上のことから、個人間のお金の貸し借りでは年109.5%の利率まで問題ないと信じられているようだ。

利息制限法の上限を超える利息は民事上、無効

個人間の貸し付けに伴う利息の上限として信じられている年109.5%の利率は、年109.5%以内であれば刑事罰の対象にならないだけで、利息制限法の上限を超える部分は、民事上は無効だ。利息制限法の上限を超える部分は民事上無効になる点は、しっかりとおさえておきたい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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